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読書感想文「東京島(桐野夏生)」

「東京島」の読書感想文

桐野夏生さんの「東京島」を読んだ。東京が島‥?興味を牽かれる題名だ。 漂流や無人島の有名な物語と言えば、十五少年漂流記やロビンソン・クルーソーだろう。書かれた時代もちがうが、現代の日本人が漂流したらこんな感じなのかな?と思う。 十五少年漂流記は優秀で行動力もある少年たちだったし、ロビンソン・クルーソーは好奇心旺盛な冒険家だった。
 
東京島はバイトが嫌で逃げ出してきた、後ろ向きな青年たちの物語である。 漂流の物語と言えば、無人島で知恵と体力を使って逞しく生き抜くのだろうが、私が漂流してしまったら東京島の人たちと大差ないだろうと思う。 植物や海の生き物に少しばかりの知識はあっても、それをすぐに生活に活かす気力も勇気もない。 
 
自然のものを気持ち悪がって、かぶれたらどうしよう、食あたりになったらどうしようと、そればかり考えて行動に移さずに、「助けが来るかも」と淡い期待を捨てられず、無人島で生きていく覚悟を持てないだろう。 物語では、無人島でのサバイバルの話よりも、人間関係が主に描かれていて、「有り得るな」と思える展開の連続だった。
 
無人島でのサバイバル生活から目を背けて現実逃避をしたいのか、文化を牽引する役目を決めたり、心の拠り所として神殿を作ろうとしたり。 同じ日本人ばかりで何となく緩く生活していたところに、サバイバル能力の高い異国民も漂流してきたり。紅一点で楽していた清子だったけれど、他にも女性が漂流してきたり。
 
島から限られた人数でボートで逃げ出すときの、生死をかけた争い。 ずっと紅一点で楽していた清子だったけれど、妊娠したのは気の毒だと思った。あんな不衛生な場所で医師もいないのに、不安で怖くて仕方がないだろう。 島から逃げ出すときに、双子の赤ちゃんの一人を取り上げられてしまって、けれど勢いで海に出るしかなかった清子。
 
我が子との別れを悲しむ清子に、初めて人としてまともな部分を見たように思う。 みんな島から出て行きたがっていたけれど、私なら海に出るほうがこわい。沈没したり、サメがいるかもしれない。助けが来ない限り、島で暮らすことを選ぶだろう。
 
(40代女性)

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