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読書感想文「贖罪の奏鳴曲(中山七里)」

「贖罪の奏鳴曲」の読書感想文

冒頭からいきなり幼女殺人事件を起こした過去のある弁護士が死体を処理する、というショッキングなシーンから始まり、暗闇の中の息遣い、川の流れに飲み込まれていく死体の重みが臨場感をもって迫ってきた。

弁護士御子柴の心境が丁寧に綴られていることで存在が身近に感じられるのと同時に、底しれない感情の動きに翻弄されて、幼女を殺してバラバラにした人物に対する恐ろしさ、彼が犯人に違いないと思う気持ちが徐々に強くなった。

しかし終盤に想像もできなかった展開が待ち受けており、こころ揺さぶられ、思わず声を出して驚嘆してしまった。人間の心について考えさせられる結末にうならされた。小説中盤では御子柴が弁護士になったきっかけとなるエピソードが描かれている。

医療少年院での生活がどのようなものか眼の前に見えるように語られており、これまで知らなかった世界があった。犯罪を犯した少年たちや家族、教育担当の姿は印象に残り、少年犯罪について身近に考えるきっかけになった。

ピアノのエピソードがタイトルに繋がっているが、音楽によって少年の心が揺り動かされる、ということは確かにあるだろう、という気持ちになった。少女の演奏に少年の心が呼応する姿がリアルに感じられ、切なく迫ってきた。

はたして1年ほどの練習でベートーベンのピアノソナタが弾けるようになるのか、ということは疑問に感じたが、毎日ピアノだけ弾くことができるなら可能なのかもしれない。御子柴が、医療機器やテクノロジーの専門知識を駆使して弁護を行うシーンは圧巻だった。

小説では最後の最後に登場するシーンだが、伏線が次々に回収されて息を飲むような展開だった。悪徳弁護士ではあるが見事、と思わせられたところで思いもしなかった結末に驚かされ、その後も続けてなんとも言い難い驚きのあるエピソードが待っていた。

犯罪を犯す人間の闇を追求しながらも、罪を知り、贖罪の気持ちを持つようになった人間の心の変化を、願いを持って描き出していると感じた。

(50代女性)

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