「センセイの鞄」の読書感想文
近くの居酒屋を中心に展開される。そこで出会うセンセイと元生徒ツキコさん。年の差のある変な恋愛譚ではある。 最初は恋愛と思わずに読んでいるが、ツキコの方の気持ちが少しずつ動いているのがわかる。
それでセンセイの気持ちはどうなのか、ツキコのことをどう思っているのかが気になる。 なんとなく嫌味な感じのセンセイなんだけど、そんなに嫌でもない。素直じゃないだけ。そんなふうに感じる。ツキコも適当に反応しながら受け流す。
似ていないふたりだけど、酒の肴の趣味は合う。同じものを好んで食べるということは、気が合うということ。読んでいながらニヤつくところだった。 センセイは常に同じ服装で同じ鞄。いつもの居酒屋の店主といっしょにキノコ狩りに行くときも同じ服装で同じ鞄。そのスタイルを崩さない。
そのことには特に書かれていないが、その鞄がラストにいい味わいになってくる。 それでふたりの距離は、ゆっくりと動いていく。あまりにもゆっくりなので本人たちも気づかないぐらい。物語を急がず、短いエピソードを読んでいくうちにその変化に気づいていく。
たぶんツキコとセンセイよりも読者の方が先にふたりの気持ちの変化に気づいている。そういう書き方をしている。 気持ちを確かめて、ふとんにふたりで入るシーンは、おかしくも応援している。どちらかというとセンセイのほうを応援している。
そのセンセイの下半身を応援している。役に立ってくれと。ツキコも協力してくれているだろう。 読んでいる私が男なので、歳をとってもそんな恋愛ができるのか、そんな気持ちでいたいと思わなくはない。
妻子ある身なので、遠慮ぎみに書いたが、本音をいうと、そうありたいと思うし、うらやましいと思う。 視点はあくまでもツキコであるので、いやらしくもない。センセイ視点だともっと生なましい感じで、谷崎潤一郎ぼさが出てしまう。
女性作家なので、女性の視点でよかった。 ツキコはずっとセンセイと呼んでいた。カタカナのセンセイだった。 読んでいてとても心地よい小説だった。
(50代男性)
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