読書感想文「ニシノユキヒコの恋と冒険(川上弘美)」

第1章目で主人公と思しき「ニシノさん」はどうやら死んでいて、幽霊になって女性に会いに来るという話だったので、ファンタジー作品かと思った。しかし読み進めるうちに違うことが分かった。これは西野幸彦という一人の男の生涯を、時系列に沿って描いている物語だ。
 
物語は西野幸彦の目線からではなく、彼と恋愛関係になった複数の女性の目線によって描かれる。西野幸彦は相手の女性によって、色々な呼ばれ方をする。「ニシノさん」「西野くん」「ユキヒコ」。だから章によって名前が変わる。私は彼のことを「ニシノさん」と呼ぶことにする。
 

 
 
ニシノさんはとてもモテる。スマートで見た目も良いようだ。何か不思議な色気があって、女性の方から寄ってきているようにも見える。しかし付き合ってもいないのにいきなりキスをしたり、「僕のこと好きでしょう」と言ってみたり、彼女が居るのに他の女にちょっかいをかけたり、かなりナルシストで神経の図太い男だと感じた。
 
結局ニシノさん本人が、女たちに恋を仕掛けているのだと思う。ニシノさんは、どの恋も長続きしない。常に他の女の影があって、女達はそれを感じながら付き合う。私が共感したのは、ニシノさんが35才の時に付き合った、隣の部屋に住む女性。危険な恋だと察知しながらも惹かれ、本気にならないように付き合う女性だ。
 
私自身はニシノさんのような男は好きではない。うさん臭いし、掴みどころが無いからだ。でももし私がニシノさんに惚れたなら、こういう愛し方をするだろうと思った。ニシノさん自身も、どんな女性にも本気にならないように見える。でも瞬間的には一人ひとりを真剣に愛していたのかも知れない。そんなニシノさんも50代になってから、本気の恋をする。
 
相手は10代の若い女の子だ。彼女に対するニシノさんの様子は、これまでの女性達とは全く違う。冒頭で死んでいることからも分かる通り、ニシノさんは最後には死んでしまうが、この最後の恋の、終わりを見ずに途中で死を迎えたことが、彼にとっては幸せだったのかもしれないと思った。この作品が映画化されていることは後で知った。機会があったら映画も観てみたいと思う。
 
(30代女性)
 
 
 
 

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