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読書感想文「猿の見る夢(桐野夏生)」

「猿の見る夢」の読書感想文

主人公は、定年間近のサラリーマン。会社役員であり、年下の愛人もいる、恵まれているようにみえる男。そこに、会社では会長と社長の派閥問題が影を差してくる。それを機に、愛人とのデートも上手くいかず、家に帰れば、怪しい老女が寝間着姿でリビングを占拠しているという、なんとも暗雲が立ち込めてくる。
 
この老女は、奥さんが相談を頼んだ相手で、夢占いをしており、夢をみてお告げをしてくれるのだが、夢を見るまでは一緒に暮らすという、男にしてみれば厄介な女であった。この老女の言葉によって、ずっとこの男は振り回されていくことになる。家庭に入り込んでくる、占い師とか気味悪いことこの上ないが、追い出すと不幸になると言われてしまう。
 
この男は自分のことしか考えておらず、奥さんが何に苦しんで占い師にすがったのかなど、気持ちを全く無視しているところが、とてもムカついたが、この年の男としては現実的な気がした。その後、男の母が亡くなり遺産問題で、妹家族と揉めるのであるが、その時も、母親の面倒をほとんど看なかったのに、相続だけは主張してくるなど身勝手な行動は続く。
 
親の問題では、自分自身、遠くに住んでいる事を理由にあまり面倒をみてるとは言えず、身につまされる部分もあった。そのあとも、男は、占い師の言葉に振り回され会社での立ち回りや、愛人との関係などだんだん追い詰められていき、離婚問題にまで発展する。しかし、悪いのは自分の利益しか考えない男の行動が、災いしてのことのように思う。
 
愛人との付き合いも、他に気になる女性が現れるとその女性と比べて、悪口を言ってたり、愛人と別れた後も、自分の都合でよりを戻そうとしたり、勝手極まりない。人への思いやりゼロである。なのに女共が勝手だとこの男は思っているのである。そして、最後には会社も、家庭も失ってしまう。
 
自業自得と思うが、一つどこかが壊れると次々と、不幸が雪だるまのようになって襲ってくるのは、人生の恐怖を感じた作品であった。
 
(40代女性)

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