読書感想文「夜また夜の深い夜(桐野夏生)」

犯罪者の子供が、なぜ親の責任まで負わなければならないのか。そんな当たり前の疑問を、この国に生まれ育った私は、今まで持ったことがあっただろうか。 そしてそれは、この小説の中だけではない。遠い時代劇の中でもなく、現代の現実での出来事。

 

犯罪者の家族が遠い海外まで逃げ続けなければバッシングされてしまう国。果たして、その子供に本当に罪を償う義務があるのだろうか。その親の元に生まれただけで、連帯責任をとるという部分に、社会的疑問を投げ付けなくても良いのだろうか。

 

この本を読んで、被害者の家族が当然のように犯罪者の家族に罪を償わせようとする心理に、改めて考えさせられた。当人である被害者が加害者を恨むのは至極当然であるが、その家族がその家族をいつまでも恨み、しつこく海外にまで追いかけてまで復習しようとする心理に恐ろしさを感じた。

 

 

 

まるで江戸時代の仇取りのようだ。 でも、当の本人である犯罪者側の少女が、恨まれているとはつゆ知らず何も知らないまま天真爛漫に振る舞うところが本当に愛らしい。無知だからこそ、ナポリのスラム街の中で生きるたくましさ。こうしなければならない、こうして生きた方が良い、という刷り込みの情報が何もない方がかえって世の中で逞しく生きるコツなのだ、と教えて貰った気がする。

 

何も知らずに漫画に魅了され、自分の祖国である日本に憧れていた少女が、だんだんと恨まれていることを知り日本のことが嫌いになっていく部分も興味深い。どうやら、犯罪者家族だけではなく、何も関わりのない世間の人たちにも恨む権利がある国らしい。

 

確かに、何かバッシングを受けると全く関係のない人達からも攻撃される。そういった部分は私も大嫌いだ。常に誰か攻撃出来る人を探していて、見つけた途端、ここぞとばかりにバッシングして鬱憤をはらしているのだ。 最近ニュースで犯罪者の家族がテレビ画面に映される度に、私は今までとは違う感情を持つようになった。

 

何事も一家の連帯責任なのだろうか、と疑うようになった。子供の罪の責任を親自身が感じることはまだ分かるが、親の責任を子供がずっと背負って生きる必要はない。ましてや、関係のない世間の人には何らとやかくいう権利はない。子供は生まれてくる親を選ぶことは出来ないのだ。

 

(30代女性)

 

 

 

 

夜また夜の深い夜 (幻冬舎文庫)
桐野 夏生
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