読書感想文「灰色のパラダイス: 杉原爽香〈45歳の冬〉(赤川次郎)」

毎年9月に発刊される、杉原爽香シリーズの第31弾。登場人物が毎年一つずつ年を取って行くという珍しい形のこのシリーズを毎年楽しみにしている。今年は「爽香45歳の冬」。第一弾が「15歳の秋」だったことを思うと、初めてこの爽香に出会ってからもう30年以上も経つのかと少々感慨深ささえ覚えた。

 

爽香は毎回、殺人事件に巻き込まれ、持ち前の行動力と推理力で解決に導くのだが、今回もまた、誘拐事件と殺人事件に巻き込まれることになる。恩師河村布子の娘である爽子がたまたま駐車場で聞いてしまったという会話、そこからまたも真相にたどり着いて行くのはみごとだった。

 

一年ずつ登場人物が年を取るという設定ゆえ、登場する人物の環境が年々変わって行くというところもまた、この小説の面白いところだと思う。例えば爽香にあやかってその名前がつけられた河村爽子は、有名なバイオリニストになった。

 

 

 

爽香の亡き兄の娘である杉原綾香も今や立派な社会人でバリバリ仕事をし家族を支えている。昔大変な思いやつらい思いをした人物が、幸せに、あるいは立派に活躍していることを楽しめるのもまたこの小説ならではだ。一方で30年以上の月日が流れるうちには、人生の転換期や、病気や死、悲しい出来事もある。

 

特にここ数年は爽香が身近な人の死を経験することが増えていた。兄、義姉も立て続けに亡くなり、その度心を痛めながらも周囲を懸命に支える爽香は素晴らしい大人に成長したと思う。今回も刑事で河村布子の夫である河村太郎が、病の末、亡くなる。

 

そのラストシーンには思わず涙した。思えば第一弾の「若草色のポシェット」でこの河村刑事に出会い、事件を解決したことからその後も爽香が事件に出会ったり誰かとの出会いを経験していった。それを思えば、河村刑事の死は、このシリーズも一つの転換期を迎えることになるのだろうか。

 

あるいはこれが最終話になるのか?と思うようなそんなラスト。しかしできるならまだもう少し、爽香の活躍を、今後の彼女の人生を見てみたい気がする。

 

(50代女性)

 

 

 

灰色のパラダイス: 杉原爽香〈45歳の冬〉 (光文社文庫)
赤川 次郎
光文社 (2018-09-11)
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