この物語には、30年位前に既に出会っていた。当時中学生だった私は、現在も放送されているラジオドラマをドキドキしながら毎日欠かさず楽しみに聞いていた。この物語のタイトルを偶然見つけたのだが、あんなに楽しみに聞いていた物語の内容がさっぱり思い出せなかった。
そこで、あのドキドキ・わくわく感を再度味わいたくなり、読み始めてみると、あまりにもスケールの大きな物語であることに驚いた。この物語が出た頃は、まだ日本もバブル景気の始まりの頃であり、世界もまだアメリカとソビエトの冷戦の時代であった。
その頃に、完成しているニオブ精錬プラント(全長400メートル)を南米までまるごと海上輸出するという物語を考えた著者の発想はもの凄いと思う。赤川次郎といえば、わりと軽妙なミステリー作品が多いのに、この作品は思いもよらない奇抜な発想なので、約30年経っても全く古さを感じなかった。
そのひとつに海上警備に人員や弾薬などの機材に経費をかけられないため、まさかイルカを使うという発想にもビックリした。今ならば、動物愛護団体に訴えられそうな出来事かもしれないが、イルカにとっては遊びのようにプロの侵入者の襲撃に対して、周りを跳ねたりして巨大船α号を守っていた。
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また、巨大船α号の南米行きをあらゆる手だてを駆使して、阻止を企てる悪役の久留の存在がいい。最終手段として巨大タンカーを衝突させてまでも航行を阻止しようとする行動に、悪役なのに自分の仕事にプライドを持っている骨太な男の格好良さを感じた。
最近は、簡単に諦めてしまい周りに任せてしまう人が多いので、巨大船α号を指揮した主人公の一柳といい、悪役の久留といい魅力溢れるキャラクターにわくわくした。いざ自分に置き換えてみると、一つの仕事に対してここまで一球入魂できているだろうかと考えさせられた。
巨大船α号という限られた空間の中で、少人数のチームワークを保つことの難しさが垣間見えた気がした。裏切り者の存在に気づきながらも、人を信頼していこうとする一柳の行動を尊敬していた。また、社長も昔の恩人との約束を守る為に、無茶を承知で行動する行為にも感動した。
私なら最後まで信じきることができないかもしれないので、この物語を通して、初志貫徹の難しさと素晴らしさを知り見習っていきたい。
(40代女性)
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