読書感想文「バラカ(桐野夏生)」

お盆休みを利用して、桐野夏生のバラカという小説を読んでみた。今までの桐野夏生の作品はとてもダークなものが多く、特に女性同士で起こる特有のえげつない感情の応酬を描くことに於いては女性作家の中では日本随一だと思う。ところが今回のバラカという作品には女性特有の感情のイザコザは出てくるものの、どちらかというと社会派の小説という感触を得た。

 

物語は福島の震災後、あったかもしれないもう一つの日本の姿を中心に描かれている。バラカという国籍不明の少女が福島原発近くの放射能汚染区域でたった1人の状態で見つかるところから広がりを見せる。最初にこの胸のドキッとする大きな謎を提示されるので、この少女はいったいどこから来たのだろう?名前も不思議だし日本人なのか?

 

 

 

と疑問を抱きながら読み進める。この疑問が物語全体に緊張感をもたらし、ページをめくるごとに謎が少しずつ解き明かされていく。次どうなるのだろう?とドキドキしながら読んでいくため、私は2日でアッと言う間に読み終わってしまった。

 

物語の最初のうちは桐野作品の魅力の一つ、大人の女性のドロドロとした感情、その感情がもとで登場人物が次々と問題行動起こしていくため、他の作家だとゲンナリしそうなところ、細部にも手を抜いていないため、次第に登場人物に嫌悪と共感を持ちながら読んでいくことが出来た。

 

私は男性だが、女性はこういう時、こういう事を感じるのかもしれない、とリアルに感じとることが出来た。男性にまで女性の気持ちの細部を共感させる、その桐野夏生の魅力を前半で再認識させられた。中盤からは登場人物も徐々に増えていき、なぜバラカという少女が福島のそこにいたのか、その疑問が気持ちよく解消されていく。

 

中盤から後半にかけては、重い十字架を背負わされたバラカという少女の波乱万丈な人生が展開されていく。逃亡劇あり別れありのハラハラドキドキ系の小説かと思いきや、もし日本が原発の再稼働を今以上に推進していたら国家の形はどうなっていたのだろう?という考察がリアルになされていて、そのイビツな国家像に恐怖を覚えていく。

 

エンターテイメント性とともに今の日本の政治、社会について、本当にこのままでいいのだろうか、と深刻に考えさせられる。感情、サスペンス、社会問題、様々な要素が福島の悲惨な事故を舞台に繰り広げられるので、読み応えがあり、読んだ後の余韻も数日続く優れた作品になっている。女性の持つ切実さ、正義とは何か、この二つが読後感としていまも続いている。

 

(40代男性)

 

 

 

 

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