読書感想文「小さいおうち(中島京子)」

「小さいおうち」の主人公は田舎から東京へ出てきた女中のタキちゃんだ。そのタキちゃんが小さな赤いおうちで働いた日々の物語である。タキちゃんは仕事ができる女性だ。言われたことをただこなすのではなくて、自分の頭を使って仕事をしている。戦時中で食べ物が少なっても限られた食材を工夫し、おご馳走のようにしてみせるのだ。

 

この本を読んでいると、私もタキちゃんのように仕事のできる女になりたかった。と、つい思ってしまうのだ。勉強ができるのとはまた少し違う、頭の良さや聡明さというものがタキちゃんにはあるのだ。タキちゃんは、奉公している家族のことを常に想いながら生活をしている心も美しい女性だ。仕事とはいえこんなにも他人を想い、心から奉仕できるだろうか。

 

私には無理だ。人としての器の違いを感じさせられる。小さいおうちの幸せな日々のすぐそばにあったのは戦争の日々だ。物がなくなっていき、若い男も消えてゆく。もし、自分の最愛の人が戦争へ行くことになったら、と考えるだけでも胸が苦しくなるようなことが昔は本当にあったのだ。現代に暮らす私には信じられないくらいに悲しいことだ。

 

タキちゃんから学んだことがある。どんなに辛い世の中でも苦しい生活でも、忘れてはいけない大切なものがあるのだ。それ心の豊かさだ。心まで貧しくなってはいけないのだ。これは私がこれから人生を生きていく上で大切にしようと思っていることである。そんなとても素敵なタキちゃんが結婚をしなかったのは意外なことだった。

 

誰もがいいお嫁さんになるに違いないと思っていたタキちゃんは、生涯独身を貫き通したのだ。それにはきっと何か理由があるのだ。タキちゃんのことだから優しい、愛に満ちた理由のはずだ。奉公している家族とタキちゃんが外食をする話がある。食いしん坊の私はその時代のご馳走を想像してみるのだ。パーラーのフルーツパフェやカレーライス、それはきっとハイカラ味のはずだ。

 

(30代女性)

 

 

 

小さいおうち (文春文庫)

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