読書感想文「自負と偏見(ジェイン・オースティン)」

とにかく出だしのベネット夫妻の会話が最高だ。当時、上流階級に位置する女性が生きる術は結婚だという前提は知ってはいたが、女性ばかりの5姉妹と読んで谷崎潤一郎「細雪」の4姉妹が想起された。あの本は姉妹の婚活がストーリーの大筋を作っていたなと思い出しながら類似性を見つけては喜んで読み進めた。
 
ミセスベネットの滑稽さとヒステリー、ミスターベネットの斜に構えた言動と父親としての弱さ、見た目も性格もバラバラのエリザベスたち5姉妹が、大きな財産は持たないながらも紳士の一家として尊厳を持つ生き様は掛け値なしに羨ましく思った。ジェーンとビングリーの遠回りな恋愛は微笑ましく思えたものの、エリザベスとダーシーの恋愛と比べるとやはり面白味に欠いた。
 

 
 
エリザベスがダーシーを徹底して嫌う、敵対さえする、求婚を断り気まずくなる、しかし様々な事情を知り気持ちが変わる、そして次第に愛情を抱く、とテンポ良く進むかのようで実際はダーシー側の感情が見えにくく途中でかなりもどかしく感じた。特に最大の障壁であるキャサリン夫人とエリザベスがやり合うシーンはありがちでも、何となく展開がわかっても、なお引き込まれてページを繰った。
 
甥のダーシーやダーシーの許婚である自分の娘についてあれこれ話すキャサリン婦人に対し、ダーシーを干渉する権利はともかく私を干渉する権利はあなたにない、ときっぱり言い切る場面が最高だった。それでも爵位を持つ家に生まれ上層階級にいるキャサリン婦人はエリザベスの地位を引き合いに出してこき下ろしたが、理路整然と反論するエリザベスが格好良くて素敵だった。
 
イギリスの美しい自然や、上流階級と一口に言っても爵位あるなし、家系の長さ、土地やお金、生活ぶりとグラデーションのように上下があり、主に結婚による姻戚関係が大きく左右することがまざまざと描かれていて、そんなシリアスなストーリーがある種コミカルに進んでいくところが好きになった。
 
(20代女性)
 
 
 
 

自負と偏見 (新潮文庫)
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