「虚ろな十字架」の読書感想文①
私には子供が一人いる。私は、この作品を読むことによって、子供に対する気持ちがさらに強くなった。私はいったい、なにが虚ろなのかが気になって読み始めた。プロローグでは母親が居ない学生の沙織、父と二人暮らしで沙織は家事を苦でないとえがかれてる。
父親も良いお嫁さんになると安心している。また、プロローグの最後には、沙織の学校の先輩、史也と付き合うという、母親が居なくても幸せに暮らしているという印象をうけたのである。プロローグが終わると、中原という動物の葬儀屋が登場する。
沙織はどこに行ったのかと思ってしまうが、この中原の行動によってバラバラの伏線が1つに纏まっていくのである。中原は強盗に娘を殺されている。
娘を殺した強盗は死刑によってこの世にいないが、中原の日常の中で暗い影がある。私ははじめ、これが虚ろな十字架だと思った。しかし、読んでいくにつれて、これだけではない事が見えてくるのである。
物語の中盤に被害者遺族にとって死刑は通過点でしかないという表現がある。確かに、もし我が子が殺されたら、生きる目標が無くなると思う。
私自身、加害者がいなくなる事によって、我が子を失った怒りの矛先は目指す所を失う。それにより、放心状態になってしまうであろう。強盗が死刑になった後、中原と妻の小夜子は離婚する。
しかし、犯罪被害者を支援する活動をしていた小夜子が、何者かに殺された。犯人は68歳のお金にだらし無い、浜岡という男。
しかし、動機は迷惑をかけている娘夫婦を守るためだった。もっと、詳しく言うとお金を工面してくれる史也である。
史也は医者の小児科になってた。小児科になった理由が沙織と付き合っていた学生時代に、沙織が妊娠し、出産後、すぐに殺して樹海に埋めた事からだ。とても、もどかし気持ちと重い十字架だなと思った。
また、浜岡という父が居る史也の妻、花恵と結婚した理由も十字架を背負っての行動だと思った。なぜかというと、二人が初めて出会ったのは、史也と沙織が子供を捨てた同じ場所だったのだ。
そこで、花恵が子供を埋めようとしていたのところを止めたのが史也だったのである。ここで思った事は、中原の娘を殺した強盗と史也の差である。同じ殺しをやっているのに対し、強盗は他人の手によって、殺され罪を償う運命になった。
しかし、史也の方は誰にも裁かれることなく、自分がしたことを忘れずに償いをしつずける人生なのである。
また、沙織の方も幸せな人生ではない。自殺未遂の日々を過ごしていた。史也と沙織は警察に出頭し罪を償うつもりだったが、警察は樹海に埋めたと言う死体を見つける事が出来ない…。死体が見つからなければ、検挙できない。
私は、二人が罪を償いきったのだと殺された子供が言っているような気がした。現実、子供が殺される事件がある。いらない子だから殺すのでなく、どうにか子供が生きられるよう、子供を貰ってくれる施設が全国的に増えるべきだなと思わせてくれた作品だった。
(20代女性)
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