読書感想文「赤い指(東野圭吾)」

この物語は本当に面白く、読み応えがある。一見すると、よくあるミステリーのようであるが、その裏には高齢化社会や認知症、若者の思考の歪み、家族の関わりの希薄化など、現代の日本が抱える様々な問題が潜んでいると感じた。そして数々の謎や、些細な綻びに目を向ける加賀刑事の洞察力には脱帽する。
 
加賀刑事の立場から「早く犯人に行き着いてほしい、証拠を掴んで欲しい」と思う一方で、犯人の立場から「見つかるかもしれない、バレるかもしれない」と思う気持ちもあり、様々な視点からハラハラドキドキして楽しめる作品である。題名の「赤い指」の意味が分かった時、なんともいえない切ないようなもどかしい感情に包まれた。
 

 
 
そして最後には、全く考えもしなかったオチが用意されており、その事実に触れた時、震えるような驚きが訪れた。ラストの加賀刑事vs犯人の謎解きのシーンは本当に手に汗握る緊迫したものであった。この家族はこれからどうなっていくんだろうと、今後の彼等のことも気になるようなラストであった。
 
そして「もしかしたら自分もこの犯人のようになるかもしれない」とも思ってしまうような、読者に突き刺さり考えさせられる内容となっている。また、加賀刑事と父の関わりも少しだけ出てくるのだが、私はその関係性に涙した。この僅かなサイドストーリーの方が本編か?と思いたくなるほどの感動と安心感をくれる役割を果たしている。
 
決して短くはない物語だが、一気に読んでしまった。それくらい面白く、続きが気になって仕方ない仕上がりであった。私は、この本を読んで東野圭吾の作品を知った。その後も色々な作品を読んだが、未だに「赤い指」が一番好きであり、これを超える作品はないのではないかとさえ思っている。
 
どんでん返しが好きな人は絶対に読むべき作品だ。そして、たとえオチが分かっていたとしても、また何度も読み返したくなるような物語だ。
 
(20代女性)
 
 
 
 

赤い指 (講談社文庫)
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