「白銀ジャック」の読書感想文
疾走感を持って一気に読める。この本を読み終えたときの感想だ。主人公はゲレンデを見回るパトロール。それだけですでにちょっとかっこいい。すでにちょっと羨ましい。
そんな主人公が、ゲレンデに爆弾が仕掛けられたという事件に巻き込まれ事件解決を目指しながら、過去を引きずる人と対峙したり、淡い恋愛模様があったりとあれこれ盛り込まれた娯楽作だ。
私にとっての東野圭吾作品は、これといって読みたい本がないときに手に取る、いわば安全牌だ。決して悪い意味ではなく、むしろ私は東野圭吾作品が大好きだ。
出ている文庫は全部読みたいし、実際にほとんど読んでいる。でも、他の作家の作品も話題になったりジャケットが気になった時に自由に手に取りたいので、必ず読むであろう東野圭吾作品は後に回しておいて読む物がなくなった時に開くわけだ。
東野圭吾作品は総じてミステリー作品が多くこの白銀ジャックも例外ではないのだが、印象として全体的にタッチが軽く読みやすい。普段殺人とか犯人捜しとか、そういった作品を嫌煙する人にも読みやすい一冊だ。
ウインタースポーツをする人なら尚のこと想像力を働かせて、主人公になりきって読むことができるだろう。
そんな風に主観的に妄想しながら読むのがとても気持ちがいい。自分がゲレンデのパトロールとして、ルールを守らずコース外に出たものを追いかけたり、犯人と雪上で激しいレースを繰り広げたりする様は読んでいて気持ちのいいことこの上ない。
そんな意味では実際に雪の上を滑ることのできないオフシーズンの楽しみとしてお勧めしたい。そのような娯楽作であるこの作品も、その実ちゃんと現実社会でも起こっている問題が描かれているため、浮足立ったファンタジーSFにはならずに読むことができる。
経営難に喘ぐスキー場の問題や、登場人物の等身大の悩みが物語をいい具合に引き締めてくれる。この作品の不思議なところは、読者を裏切らないところだ。想像したラストシーンとあまり違わないラストを迎えることになるのに、ちゃんと面白い。
気持ちよく読み終えることができる。それもこの白銀ジャックの魅力のひとつだろう。ちょっと元気がほしいとか、今重たい物語はちょっと、というときに読みたいお勧めの一冊だ。
(20代女性)
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