「マスカレード・ホテル」の読書感想文①
仕事が行き詰まって、しかも風邪を引いてしまった最悪の時期に『マスカレード・ホテル』を読んだ。普段から仕事柄、小説はたくさん読んでいるが、主にいわゆる純文学や外国翻訳物だ。
気分転換にたまにはハラハラする日本の推理小説でも読みなよって姉に手渡されたのがこの本だった。浩瀚な本なのに一日で読了した。それくらい、惹きつけられたのだ。
帯にあった「完全に化けろ、決して見破られるな」という言葉が、読む前にはどういうことか謎だったが、読んですぐに意味が分かった。高級ホテルでの潜入捜査のことだ。一流ホテルマンである尚美と捜査一課刑事の新田。尚美の仕事はお客様の仮面を守ること。
新田の仕事は犯人の仮面を剥ぐこと。二人のプロ意識のせめぎ合いと、息つく暇もないような事件の展開に、次は、次は、と気になって、体調の悪さも忘れてどんどん読み進めていった。
私は、この物語のサスペンスと展開の巧みさにもちろん惹かれたのだけれど、それよりも印象的だったのは、尚美と新田のプロ根性だ。
尚美は新田を一流のホテルマンに見せるために研修係となるが、新田に鼻っ柱の強い女と思われても、高級ホテルのクオリティを守るため、ズバズバ意見を述べていく。彼女のホテルを守りたいという強い信念が、やがては事件解決の糸口をも見出していく。
新田は新田で、事件解決に対して大きな熱意を持つ男だ。お客様は神様という尚美に対して、人を疑うのが仕事の新田だが、彼の鋭い観察力が、結局のところ尚美を補助し、彼女を助けていく。
ホテルマンと刑事、一見まったく正反対の職業で、水と油のような二人だが、二人の根底にあるプロ意識が、尚美と新田を深いところでの相互理解に導き、事件も解決されていく。繰り返しになるが、私はこの小説を仕事が行き詰まっているときに読んだ。
なんとかしなくてはと焦っている時であった。でもその行き詰まりは、自分のせいではないという甘えた気持ちがどこかにあったのだ。
『マスカレード・ホテル』を読んで、そんな気持ちは吹き飛んだ。自分の仕事を何としても全うしようとする強いプロ意識と信念が、事態を好転させるのだと教えられている気がした。明日からも仕事頑張ろうって思わせてくれた小説だった。
(30代女性)
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