読書感想文「マスカレード・ナイト(東野圭吾)」

マスカレード・ナイトは東野圭吾のシリーズ物の小説でマスカレードシリーズである一作目のマスカレード・ホテル、二作目のマスカレード・イブに続く三作目だ。まずこの小説が出たということを知って真っ先に本屋に行きどのあたりに並べられているかをチェックした。

 

当然平積みで一番目立つ入り口や正面の小説類のところに特設コーナーが設けられていた。さすが東野圭吾先生だ、と思った。このマスカレードシリーズはあるホテルマン(フロントクラーク)と刑事がメインキャストでホテル・コルテシアで起こる様々な事件や人間模様を描いていく推理小説である。早速手に取って読んでみた。

 

三部作ではあるがまだ前作や第一部のマスカレード・ホテルを読んでない人でもすんなりと入っていけるような導入だった。ホテル・コルテシアという場所は一緒だがフロントクラークからランクアップしてコンシェルジュになっていた山岸。彼女が新田刑事との駆け引きをしながら仕事をこなしていく。

 

それは第一作から変わらず面白い部分だった。コンシェルジュになってさらに責任感が強くなっているのもよく分かった。仕事の内容も厄介な客の対応に迫られながらもコンシェルジュは簡単にノー、できません。とは言わないという信念をもとに何とか仕事をやり遂げようとするひたむきさとまじめさは好印象だ。

 

また厄介な客の厄介な要望に応えるためのアイデアを様々なところ、時には新田刑事からも得られるというところも面白い部分である。肝心の事件はというと最終的な謎の解き明かしが秀逸だった。登場人物の色々な観点から事件を回顧していきそこから読者がヒント、そして答えを紡ぎだそうと手ほどきするのがわかる。

 

そしてうすうす気づきだしたときに犯人本人が語りだす。なんとも引き付けられる流れだった。それまでに張られていた伏線も見事に回収し一本の線につながるのだ。エピローグでは山岸がロサンゼルスに異動するというものだが続編があるのではないかと期待を持たせるものだった。

 

(30代男性)


 

 

 

 

「なぜ人は人を殺そうと考えるのか」その理由は他人には推し量れないものだ。この物語の犯人の男の動機も、女の動機も、結局他人には理解できないどうでも良いものなのだろう。刑事が一般論や常識で動機から犯人を推理しようとしてもまったく意味がない。ミステリーだが、読者が犯人を推理する面白さはあまり無いミステリーだと思う。

 

作者の展開スタイルから犯人を予想できる点はあるが。しかし、殺害の動機が他人に理解できない、という点はまさに「なぜ人はホテルに泊まるのか、なぜそんな要求をするのか、それはホテルマンにはまったく理解できない」という、物語全体にかかっているホテルの持つ謎めいた要素と通じていると感じた。それが面白い。

 

多くの人物や難題が次々と現れ、徐々にそれぞれの事情や難題が解決されていくのは、ホテルならではの華やかさとも重なって読んでいて楽しい。ただ不満が三点。まず、この小説で一番不満に思う点は、犯人の殺害の動機にもなった殺された女性の妊娠の状態である。殺された女性は妊娠4週に入ったばかりだったと解剖で判明、部屋で陽性の検査薬も見つかる。

 

しかし実際に妊娠4週に入ったばかりとは妊娠超初期であり通常は妊娠検査薬すら正常に反応しない時期である。滞納も胎芽もできていない状態で果たして司法解剖で正確な妊娠週が割り出せるものだろうか?犯人が彼女の妊娠を憎んで殺害するにしてもあまりに妊娠の成立から殺害までの期間が短すぎてリアリティが一挙に欠けて残念だ。

 

もうひとつは結末直前の犯人関係者の供述部分だ。客観的説明を避けて犯人と周辺人物の供述のみでいくつかの不明点を明らかにするが、あまり読みやすくない。実際に共犯者は誰かとはっきり示さない事も不満である。別に示さなくても十分に理解はできるのだが、供述型の説明はトーンが暗くなるのでマスカレードシリーズの華やかさに合わないと感じる。

 

主役の二人のどちらかがきちんと犯人との会話や行動で事実を突き詰めるべきだと思った。最後にホテルマンの女性が刑事の言葉遣いを正す場面もあるが、ホテルマンたち自身の言葉遣いも気になる箇所がいくつかあった。

 

(30代女性)

 

 

 

 

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