読書感想文「白夜行(東野圭吾)」

白夜行は私の中で最も心に残っている一冊である。東野圭吾の作品を、ミーハーに読み漁っていた時期がある。その中で特に印象深く残っている作品が白夜行である。二人の小学生が奇妙な運命のなか出会い、幼いながらに犯罪を犯し、その罪を背負いながらいつか太陽の下歩きたいと身を潜めながらまた犯罪を重ねてしまう。
 
そんな中でも揺るがない絆が、良い悪いは別として、羨ましいと思えた。どこにいても何をしていても他の誰といたとしても、運命共同体なのである。そして亮治の献身的な愛情。応えるようにお金を稼いでいく雪穂。いつまでも追いかけていく笹垣。この3人の関係にハラハラしながら、分厚い本だったがすぐに読み終えた。
 
途中までは背景がよくわからないままで話が進んでいくので、繋がったときにはハッとした。そういう事だったのかわ、と驚かされた。こんな複雑な話を書いていくのに、どれだけ細かく設定してから書いたのだろうかと、思った。最初の殺人事件からの展開。雪穂の周りで様々な事件が起き、怪しいといえば当然だが、小さい頃の雪穂を覚えていてそこに繋げてみる笹垣の勘にも寒気がした。
 
出来事だけを追っていけば亮司はただの犯罪者である。だがいつも全ては雪穂の為に犯している罪なのである。これ程の犠牲を払ってまでの愛情がただ素晴らしいと思えた。ここまで誰かに愛されたいとまで思った。犯罪は悪いというのはわかっている。この2人が犯罪を犯さずに、幸せになれた道を考えたりもした。だか亮司の父親が生きていれば幼い雪穂は苦しみから逃れられず不幸であった。
 
父親の犯罪を明るみに出したとして亮司はいじめにあい、転校もするだろう。やはり犯罪を犯しても犯さずしても幸せな道というのが見つからなかった。父親を殺してしまったのは軽はずみであったと思うが、許せない気持ちと雪穂を守りたいという気持ちは純粋なものである。
 
だが亮司は死亡届を出した時点で人生を捨ててしまった。太陽の元に戻れなくなってしまっても良かったのかという疑問は残った。ただ時効がきて、雪穂が幸せならば結婚などしなくても良かったのか。凡人には到底理解できないような、深い愛情だったのだろう。理解はできなかったが、感動はできた。推理小説のような、ミステリーかと思ったが、悲しいラブストーリーであった。
 
(30代女性)


 

 
 
 
この作品を読んで、最初の男の殺人事件の真相や、その後の雪穂にまつわる人間の不審な不幸などについてはっきりはしないのですが暗に雪穂の関与が仄めかされ、暗に仄めかされるだけやから怖さが増加すると思います。そうしたほの暗い怖さがあるのです。雪穂の行動は計算づくです。
 
それは自分の魂が一旦奪われてるからこそ、情に流されたりせず冷徹に目標にむかえるんだと思います。また幼いとき人間の(大人の)最も醜悪な動物的な性欲、欲望をぶつけられたからこそ、他人の欲や弱さを鋭敏に感じ取れたんだと思います。その感性のセンサーと、冷徹な思考、それとリョウの適格で正確なアシストであそこまでのぼりつめ、到達したんだと思います。
 
やはり何事もなく平穏、幸せに生きている人間は雪穂のような人間と対峙した時雪穂を負かすことはできないと思います。とはいえ雪穂は幸せではなかったとおもいます。遅くとも中学のレイプ事件以降、二人は引き返せない一蓮托生の歩みを進めつづけないといけなかったのです。
 
太陽の下を歩けなかったわけですし、どこか影が寄り添っているのです。雪穂は一見、そうした生き方を受け入れてるようにもみえます。しかし雪穂は「太陽の下を歩けなかった」と部下に言ってたし、美佳が、乱暴された後自分の経験を「悪魔」とかのネガティブな表現で美佳にもらしています。
 
やっぱり、別の生き方をしてたら、という思いが頭をよぎったりしたのだと思います。いずれにせよ、雪穂の生きる「パワー」というものはとてつもなくネガティブなパワーで、周りの人間はその思いの強さに押し負けたところがあると思います。
 
計算でコントロールしきれない博打の部分で雪穂が連勝したのは思いが強いからだと思います。
なかなか現実には居なさそうなとてつもない人間なのですが、それでいて環境の条件が整えば現れてきそうな人間でもあります。そうしたリアリティが読者を不安にさせ、ページを読み進めさせるのだと思います。
 
(20代男性)


 
 
 
映像化された作品なので、一度読んでみようと思い手に取った。想像していたよりも淡々と物事が進んでいくため小説というよりも、日記もしくは新聞を読んでいるような感覚に陥った。作品全体から冷たい印象を受ける理由は、事件を起こす「亮司」と「雪穂」という男女2名の主要人物の心情が全く描写されていないからである。
 
きちんと2人の台詞や容姿を形容している部分はあるのだが、事件に対する罪悪感など2人の感じている事や考えている事が不明瞭なのだ。そのため、2人が申し訳ない気持ちや後悔などのネガティブな感情を一切持たずに数々の事件を起こしアリバイ工作をしていく様が異様な光景に見えてくるのである。
 
2人の異常さを際立たせるために敢えて登場人物の心情描写を撤廃したのではないかと考えられる。しかし、2人の距離感を表す唯一とも言える台詞が作中には存在する。それは、「雪穂」が従業員に対して言う台詞である。彼女は「あたしの上には太陽はなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから」と言うのである。
 
「亮司」も作中で似たような台詞を発しているため、犯罪を犯した2人が恋も愛情も超越した唯一無二の存在である事を示している。つまり、お互い特別な存在として認識しながらも罪を重ね続けたという事になる。最終的に、男の方は女に対して恋愛感情を抱いているとも捉えられた。しかし、女の方は男の死に際に立ち会っても「知らない人です」と言って立ち去るのだ。
 
この場面でも、彼女の心情は一切述べられていない。男は自分の命を犠牲にして2人の秘密を墓場まで持って行ったにも関わらず、女は冷たい態度を取ってその場を離れるのだ。その時、彼女がどのような気持ちで男性の死に際に居合わせたかは読者の想像に委ねられる形になっていると感じられた。
 
利用価値が無くなったとの見方もあるが、そうであるならば「太陽に代わるものがあったから」などいう発言はしないだろう。よって、「亮司」の意思を汲み取った「雪穂」は敢えて悪女を演じ切ったのだと考えられる。
 
(20代女性)
 
 
 
 

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