読書感想文「トラップ・ハウス(石持浅海)」

この本を読み進めていく程に、人の持つ心の闇の部分に潜む怖さを強く感じた。元々私には人間恐怖症の傾向があるので、人の視線に過敏に反応しやすくて表面上の人の繋がりだけになってしまう事が多い。
 
それでも、この物語の主人公たちなら学生時代の信頼できる仲間として付き合っているから、楽しい卒業旅行の話になるのかと思っていた。ところが、全く違っていた。 確かにタイトルはこれから起こる事を予言していたのだが、その事に気づくのは私の場合遅かった。
 
その舞台となったのが、キャンプ場の隅にあるトレーラーハウスであった。しかも、予約していた仲間の1人を除いた8人全てが閉じ込められてしまうなんて、密室トリックはミステリーの定石だが予想外な展開で読みやすくて面白かった。
 
このトレーラーハウスには、犯人の手の込んだ様々なトラップが仕掛けられていた。そのトラップは、些細なトラップで窓や絨毯に画鋲を仕込んでいたり、机の脚を切断しておきながら戻しておき倒れるようにしておくなどと、少し幼稚だが緻密さに恨みの深さを感じた。
 
だかまさかそのトラップの目的が、2年前に死んだ仲間の死の真相を究明する為にこんな手の込んだ手段を実行するなんて信じられなかった。犯人は大切な人を失った悲しみを知っているのに、このやり方はあんまりな気がして、もう少し違う展開で物語が進んで欲しかった。

 
 
 
それにしてもトレーラーハウスという限られたスペースに閉じ込められ、ドンドン心理的に追い込まれていく怖さはまるで”真綿で首を絞められていく”ようだ。現実問題あまりの恐怖に私には耐えられそうにないと思ってしまい、物語とはいえこの状況でも冷静さを保とうとする広瀬や本橋の精神力の強さに感心してしまった。
 
昔の人の言葉で、『3人寄れば文殊の知恵』とはまさにこの状況の事で、お互いの記憶を辿りながら犯人の目的や犯人は誰なのかを考え出せた事にも良くできたストーリーだと感心した。さらに迫り来る恐怖の中では、限られた仲間を疑ってしまう事は仕方ないと思うが、人を仲間を信じきる事の大切さも改めて思い知らされた作品であった。
 
(40代女性)
 
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