読書感想文「片想い(東野圭吾)」

この本に出会い、私は男女は何を基準に分けられているのだろうかと考えさせられた。この本では性同一性障害を持つ人の様々な苦悩や葛藤が描かれている。カミングアウトができた人はある程度の壁を乗り越えている。しかし、誰にも相談できず、一人で心と体の違いに苦しんでいる人もたくさんいる。

 

このシーンからもしかしたら私の周りにも知らないだけで苦しんでいる人がいるのかもしれない。知らないうちに「あなたは女の子だから、あなたは男の子だから」といった言葉で人を傷付けてしまったことがあるかもしれないと思った。そして、ここで”男らしさ女らしさ”とは何なのかという疑問が生じた。

 

男の子スカートをはいてはいけない。女だから乱暴な言葉使いをしてはいけない。では逆なら良いのか。このことに答えはないのだと思った。性別は産まれたときの身体的な特徴だけで戸籍上分けられている。今までなんの疑問もなかった。しかし、この本を読み進めるうちに、本当にそれで良いのか?と思うようになった。

 

この本において中尾が美月の心について男女を碁石の黒と白に例えてこのように説明している。「男を黒い石、女を白い石とするだろ。美月はグレーの石なんだ。どちらの要素も持っている。しかも五十パーセントずつだ。だけど、どちらに含めることもできない。元々、すべての人間は完全な黒でも白でもない。黒から白に変わるグラデーションの中のどこかだ」

 

まさに、その通りだと思った。グラデーションのどこかに立っている。限りなく黒に近いあるいは限りなく白に近い場所にいるから黒であることや白であることに何の疑問もなく受け入れられるが、グレーであればどうするのか?性別を男女に分けただけではグレーの人の属する場所がない。性同一性障害とは心と体の性が一致しないという単純なものではないのではないかと考えさせられた。

 

私は女性であるが男性的な要素も持ち合わせている。男性的な要素があっても自信も回りも私を女性と認識する。それはおそらく見た目が女性の特徴を持っており、女性らしい服装をしているからだ。女性的な特徴をかくし男性のような格好をしたらどうか?男性と認識する人がいるかもしれない。しかし、中身は変わらない。結局、人は見た目だけでは本質はわからない。

 

この本を通して人の性別は決して見えている部分だけで判断してはいけないと思った。男性らしさ、女性らしさが大雪なこともあるだろう。しかし、そんなことより自分らしさがもっと尊重される世の中になったらもっと生きやすくなる人が多くなるのではないだろうなと思った。

 

(20代女性)


 

 

 

 

男とは、女とは、性とは。WOWOWでドラマ化ということもあり、名作の多い著者なので外れはないだろうと読んでみたが、予想以上にずっしりと心に残る作品だった。ジェンダーの問題は今に始まったことではないが、トランスジェンダーの芸能人やモデルをテレビでも見かけることの増えてきた昨今。

 

私のような若い世代は「オネエ」と言われる方々や「ゲイ」への抵抗も、少なくなってきたように感じる。だがやはり、まだまだ理解とまでは程遠いのが現状のように思う。生まれ持っての性というものがなんなのか、心?体?どちらの性が正しいのか。主人公の哲朗と共に、私も考え、悩んだ。そこで、登場人物たちが言葉で、時に行動で生き様で、「性とはな?なのか」を教えてくれる。

 

学ばせてくれる。それは本作のヒロイン?でもある美月であり、陸上選手の末永睦美であり、バーの店主相川、友人である中尾、そして妻の理沙子。相川の言った「メビウスの輪の裏と表」そして中尾の言った「グラデーション」という言葉。私もハッとさせられた。いや、そうか、としっくりきたという方が正しいかもしれない。

 

「男らしいね、男なのに、男みたい、男だから」「女っぽい、女みたい、女なのに、女だから」。違和感を覚える言葉たち。その理由が分かったように思えた。男みたいな性格の女。女みたいな男。いや、そもそも違うんだ。ただの「人間」なんだ、と。だが、私は手放しで「人間」、ジェンダーのない世界を受け入れることは出来ない。

 

これは悔しいことでもあるが娘を産んでまた少し考える所も出てきた。年代によっても、環境によっても読むたびに新鮮に考えることが出来る、そんな作品なのだなと思う。ジェンダーの問題の部分だけでなく、ミステリーとしてもさすが!と言わざるをえないどんでん返しに、切ない事件の真相、そして片想いという題名に納得のラストは純粋に読み物として引き込まれ、本当に面白かった。

 

戸籍謄本のカラクリにはアッと驚いたと同時に、なるほどなと感心した。現代のものさしで見るトランスジェンダーである彼ら、彼女らは平穏を手に入れる為ならそこまでの覚悟があるのかと、今の社会で生きる辛さ、苦しさがまざまざと見えた。私自身、理解が深まったかといわれると少し違う。まだそこまでいってないように思う。

 

ノンフィクションの映画を見た後のような…まだ頭で整理している段階だ。きっとこの整理はこれから長いこと続けていかなくてはならないだろう。約600ページでここまで心に残すとは。この本に出会えて本当によかった。

 

(20代女性)

 

 

 

 

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