「どちらかが彼女を殺した」の読書感想文
この作品は最後まで、犯人が誰なのかハッキリとわからない作品である。具体的にいうと主人公の妹を殺した犯人は、妹の友達か、その友達の彼氏のどちらかである。
最後まで、どちらなのか分からない結末で終わってしまったので、とてももどかしいが、ある意味さすが東野圭吾が書いた作品だとも思った。
最後のシーンは主人公がその容疑者2人に電気コードを取り付けて、主人公の右手と左手にスイッチが伸びていて、推理をしながら最後はどちらかのスイッチを押すところで物語は終わる様になっている。
この終わり方がとても斬新で、最後はジェットコースターの様な目まぐるしい展開に、読んでいてラストは一気に突っ走る気持ち良さがあった。
全体のストーリーは主人公の職業でもある交通警察官の知恵や職業上の推理力をいかしている辺りがとても面白く、主人公の推理力に説得力を持たせるものであった。
唯一の肉親の妹が殺されてしまう辺りも、兄としての心情や妹への愛情がとても純粋に感じ取られていて、他の作品とは違った心情で読むことが出来た。
他の作品では恋人や婚約者などが殺されて推理をしていく作品がいくつかあるが、この作品は妹が殺されてしまい、犯人の割り出しと復讐を狙っていて、あまり見たことがない作品である。
兄と妹という関係性がしっかりとしていて、その妹はあまり美人でもなく、どちらかというと地味な独身の女性、という辺りも読んでいて親近感を持った。
兄はそんな妹をとても大切にしていて、妹の幸せをとても願っていた事もあり、殺されてしまった復讐心が、読んでいて感情移入しやすいものであった。作品中に登場する刑事と主人公の掛け合いも、読んでいて非常に面白いものであった。
この刑事がとても優秀で、主人公は犯人の割り出しの為に警察に内緒で殺害現場を調べていたのだが、その刑事だけが主人公の行動を察知して犯人の推理合戦している所も見所である。
東野圭吾の作品は色々と読んだが、この作品が他の小説と大きく異なっているのは、最後まで犯人が特定されず終わってしまう事にあり、逆に印象に残った作品でもあった。
(30代男性)
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