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読書感想文「刺青(谷崎潤一郎)」

「刺青」の読書感想文

何かで紹介され、ずっと気になっていた短編。いつか時間のあるときに本屋さんに探しにいこうと思っていたら、家族が持っていたので拝借した。谷崎潤一郎の作品はこれまで一度も読んだことがなかった。名前は知っていたが、なんだか「官能的な作品を書く人」というイメージがあり、敬遠していた。
 
借りるのも買うのも恥ずかしい、読んでることを誰にも知られてはいけない、くらいのものだと思いこんでいた。無知すぎてはずかしい…。読み始めてすぐに、「これが官能的と名高い文筆家の書く文章なのだな」と実感した。するする読める。その原動力が、私の中にある、なにやら少し艶っぽいものが多く働いている気がした。 
 
もしかしたら思い込みかもしれないけれど、そう思いながら読み始めたことは覚えておこうと思った。登場人物は今の時代だったら「まだまだ子ども」と言われるような年の人ばかりだった。でも、セリフは非常に大人っぽい。たっぷりとした含みをもった会話を、たぶん、ゆっくり、する。
 
入れ墨の彫り師の話なのですが、色や図形の描写も細かく、丁寧にされているので、会話の様子もありありと頭の中に映像的に感じた。同時に、映画化するとしたら、個々のイメージが強すぎて、とても難しいのではないだろうか。基本的にさらりとした肌触りの文体だが、書いてある内容はグリングリンにエグかった。
 
性的欲求と芸術的欲求がガッチリと組み合わさっており、非常に頑固でアーティスト肌な主人公のこだわりと弱さ、強引さ、卑怯さ…。そしてその全てを受け止める、美しい少女。少女とはいえ、母性にあふれていた。大きな大きな存在。あまりにも素晴らしい女性なので、少し自分と重ねて考え直してみることにした。
 
もし、私が彼女と同い年だったときに、もしも、同じ、知らない間に望んでもいない入れ墨を入れられ始めてしまったら…。案外、受け止めていたかもしれない。でもそれは、大きな母性とかとはまったく関係ない理由で、「有名な彫り師が見初めてくれた嬉しさ」「中途半端な状態で終わらせたらかっこわるい」程度の、くだらないこと。
 
けれども、それを口に出さないだけで、名作といわれるような小説になるのか?少女が私と同じ思考だったとしたら?もしかして、自己プロデュースの話なのか…?等と色々な方向に想像を働かせてくれる元となる面白い小説だった。
 
(30代女性)

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