読書感想文「痴人の愛(谷崎潤一郎)」

私が大学生の頃、どんなストーリーかもわからず谷崎潤一郎とタイトルがなんとなくきなって読んだ一冊である。大学生だった私は恋愛に真っ最中のころであった。でも、その頃の私は、同じ年の男の子と一般的なお付き合いをしたことしかなかった。

 

そんな私にはとてもディープな恋愛事情が描かれた作品であるが、なにせ恋愛には興味津々な年頃ということもあって、最初から面白くて食いつくように読んだ。年下の女性が一回りも年上の男性を翻弄していくストーリーに、どんどんはまってゆく。そして、読み進めていくうちに、ナオミに惹かれていった。

 

ナオミみたいに自由でありながら、こんな贅沢な愛され方されたいなぁと、ナオミになった気になって読んでいた。ナオミになった気分でいると、主人公の譲治が、お金もかけてくれるし、どんどん愛してくれるので、すごく気分が良い。女性としては最高な気分になれる。

 

そんなうちに、あっという間にお話が終わってしまう。ストーリーの終わりには、まだまだこの愛に溺れていたいと、名残惜しさを感じた。読み終えて、100年近くも昔に、こんな恋愛を書いた小説があることにびっくりした。現代でも通じる垢抜けた恋愛模様ではないかと思った。

 

そして、この作品を読んで今までの自分の恋愛に物足りなさまで感じてしまった。実は、この作品を読む少し前にエイドリアン・ラインの映画「ロリータ」を観ていて、これにもどっぷりはまってしまっていた後だったので、「痴人の愛」を読み終えた後は、年上の男性と交際することに、輪をかけて興味をもった。

 

更には、ナオミのように男性を翻弄させる女性に自分もなってみたいと憧れさえをも持った。実際、その後はお付き合いしたのは年上の男性ばかりである。なかなかナオミのようにはいかないが、年上の男性の寛容さに甘えつつ、年上の男性に釣り合うような品を持ち合わせた女性になって、少しいいレストランに食事に行くのが若い頃の私の小さな夢ある。そして、いつもどこかでナオミを演じていたような気がする。

 

(30代女性)


 

 

 

 

痴人とは、愚か者や理性のない者のことらしい。恥ずかしながら、この本を読むまで「痴人」という言葉を知らなかった。現代でも使われているのだろうか?分からないが、何故か小説のタイトルに目を引かれた。何かものすごい壮絶な物語な様な気がしたのだ。

 

自由奔放な奥さんに翻弄されて振り回される旦那さん。一見、女性は共感できなさそうではあるが、主人公の女々しく情けない行動はどこか憎めず「しっかりしなさい」と励ましたくなる。「悪いことばかりじゃないよ」と背中をたたいてなぐさめたくなる。

 

時代背景も、ウエイトレスの少女を興味半分で引き取るなど、現代では考えられないことだけど、少し前までは日本も発展途上国だったのだなあと考えせられる。和装と洋装の入り混じった衣装の細かい記載や建物の描写、新しい文化に対する登場人物たちの受け入れ方も、大正から昭和にかけての雰囲気が目に浮かぶようだ。

 

かなり昔の物語のように感じるけれど男女のいざこざは今と何ら変わりなく、そこが少しコミカルで面白い。愛するひとに振り回されて征服されたいという願望、逆に翻弄して征服したいという願望は、実際にやるかやらないかは別にして、自分の心にもわずかに存在している気がする。

 

裏切られても見捨てず許すという深い愛情、愛する人をこちらに向かせておく為には何でもやるという思い切りの良さ。愛情の形は人によって様々だ。落ちるところまで一緒に落ち嫌なところも見、すべてを知りつくしたつもりでいたのに実は何一つ分かっていなかったというところには、思わずハッとさせられた。

 

結婚していようが愛していようが所詮、人と人は他人同士である。他人のすべてを理解することは無理であって当然のことだし、分かったつもりになることはとても傲慢だ。だけどつい、人は身近にいる他人を分かったつもりになる。恋人や結婚相手ならなおさらだ。

 

自分が分かったつもりであるから、相手の中にある自分を少なからず演じてあげていはしないだろうか? 相手も私の望む姿であろうとしてくれているのではないだろうか? その皮を剥いだ後もお互いを愛して行けるだろうか?たくさんの疑問、自問が生まれる作品だった。それをためしてみたくなる衝動に駆られるが、そんな勇気はないだろうなぁ。

 

(30代女性)

 

 

 

 

痴人の愛 (新潮文庫)

痴人の愛 (新潮文庫)

posted with amazlet at 18.07.17
谷崎 潤一郎
新潮社
売り上げランキング: 35,077

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

谷崎潤一郎作品の読書感想文はこちら

コメントを残す

シェアする