読書感想文「ビタミンF(重松清)」

心が癒される、その一言につきる本だ。とりとめのない日常、どこにでもあるごくありふれた家庭、すこしばかり問題を抱えているが、決して珍しくはない家庭の父親が描かれているだけの短編小説の集まりなのに、なぜこんなに癒されるのか。とりとめて、癒やしをくれるような説話があるわけでもなく、書かれているのはごくごくありふれた光景であるにも関わらず、読むこちの心の奥に、何か暖かいものを感じさせてくれる。
 
そして、何か大事なものを思い出させてくれる。例えば、「セッチャン」。ありふれた家庭だと思っていた日常。娘が学校の日常をかたる。その中ででてくる、いじめに合う級友。しかし、それは娘の姿だと気づいた時、どう接し、どうすればいいのか悩む父親の姿。ただ、それだけが書かれたものであり、解決をさせているわけでも、劇的な転機がくる訳でもない。
 
にもかかわらず、その親の心を読み進めると、なぜか終わりに心がかるくなってくるのである。私は確かに家族持ちだ。だが、父親ではない。父親の立場になり、同化して、感化されている訳ではない。ましてや、この本にであった時は独身であった。が、なぜだか、心暖められるような、それでいて固くなく、重くない感じだ。決して、変わった話がかかれている訳ではない。作り込まれた話でもない。
 

 
 
だけど、ふと、「あ、あの本を読み直したい」「もう一度手に取りたい」「あの話をもう一度よんでみよう」と、思い出させる一冊である。そして、何度読んでも、なぜかどこからか、新しい空気が流れ込むような、なにか、吹っ切れるような、そういう感覚を読み終えた後に必ず持ってきてくれる。
 
いまでこそ、そんなに本を読んではいないが、それなりに色々なものに出会いってきたが、読みふけるような突き動かさせる感情がある訳でも、「あー、あの続きはどうなったっけ」と難解な本でもなく、ただ、ほっとしたい、息抜きのような一冊であり、この本だけは、生涯手元に置いておきたいと思っているものである。まさに、タイトルの通り、ビタミンを心にくれる、そんな一冊である。
 
(30代女性)
 
 
 
 

ビタミンF (新潮文庫)
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