「夢幻花」の読書感想文①
この書籍の表紙イラストの鮮やかさに目を奪われた。次に本の帯に書かれていた「黄色いアサガオだけは追いかけるな。」「黄色いアサガオには手を出すな。」のキャッチコピーに惹かれてしまい手に取った。
ふと思い出した事に、昔父もアサガオを育てていたのだが、アサガオの花って黄色い花はあっただろうか。確か私の記憶では、赤系、青系、白花だったと思う。
そこで、ミステリー作家の描く物なので、今回は植物をテーマにした謎ってどんなストーリーになるのかとても興味を持って読み始めた。すると、ここに登場する人達は本当に関係性があるのかと疑問に思うほど登場人物が多くて、複雑なストーリーにビックリした。
しかし、複雑に絡み合ったそれぞれの事情が明らかになった時、今まで一握りの人間で守ってきた家族の悲しい過去と向き合う事になり、心に何か重い物が残る作品であると感じた。
それから、黄色いアサガオの秘密を知って、人の欲深さと正義感・迷いなど人の心の強さに気付かされた。
しかもまさか50年前の通り魔殺人事件がきっかけとなり、今回の梨乃の祖父の殺人事件の謎が解けるとは、本当に人の欲とは限りの無いものなのだと思い知らされた。そして、改めて麻薬作用のある物に対しての怖さも感じた。
ライブハウスオーナーの工藤の勧めで、安易な気持ちで使用してしまった結果、素晴らしい曲ができてしまい、さらに深みにハマってしまった梨乃の従兄の尚人。
この黄色いアサガオの種によって麻薬作用がある事知り、思い悩み自殺してしまうなんて気の毒である。さらに、蒲生家・伊庭家のように、黄色いアサガオの根絶を3代に渡って目指す執念の行動にも感激してしまった。
この物語を通して、もっと麻薬効果のある物の危険性の警鐘を上手く鳴らせられたらいいのにと感じた。
他にも主人公の蒲生蒼太が、原子力工学を学んでいるのに、原子力関係の道に進むかどうかとの迷いにも身につまされる思いがした。確かに、東日本大震災を経験していなければ、原発の安全神話は崩れる事は無かったのかもしれない。だか、現実に原発事故は起こってしまった。
実際あの映像を見て、今後どうなっていくのかさえわからなかったのだから、主人公でなくとも迷うのも仕方が無いと思う。尚人は、複雑な家庭環境にありながらも、しっかりと自分の将来を考えていく姿に、この物語に少しでも明るさを見出す事ができた気がした。
とにかく、すごく考えされらる作品に出会ったと思った。
(40代女性)
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