「手紙」の読書感想文①
初めて読んだ東野圭吾さんの作品が手紙だった。ちょうど主人公と同い年くらいの時に読んだからか、感情移入してしまい、私にしては珍しく涙した。その後映画化されたが、本で読んだものとの間に違和感がなかった。
これも珍しいことだと思うが、配役が良かったのだと思う。普段一度本を読んでもまた読み直すということは少ないのだが、「手紙」に関してはこの限りではなく、何度か読み直した。
印象に残っているシーンはいくつかあり、主人公の兄が弟への思いがきっかけで、殺人を犯してしまう。
それが故に、その罪を弟も背負っていくというやるせなさ。また、後に主人公の恋人になる女の子が、加害者の身内だと知ったあとも揺るがず彼を愛し、支え抜いたこと。
これは当時まだ恋愛というものの経験が少なかった私にとっては少なからず衝撃を与えられたもので、その後好きな人が出来た時に折に触れて思い出したシーンでもある。
私もこんな風に誰かを愛したいという、無意識の気持ちがあったのだと思う。それから忘れられないのが、最後のシーン。兄のいる監獄に弟が訪れるシーンだ。本と映画では多少違いがあるのだか、それでもあんなに目に、頭に焼き付いているシーンはそれまであまりなかった。
このように感想を書いていると、私は映画の方により影響を受けている気がしてきた。それでも映画化されたものと原作の間に序列を(もちろん自分の中でだが)作らなくて済むのは、やはり原作が素晴らしいのだと思っている。
東野圭吾さんの作品は何と言っても読みやすく、突飛すぎないもの、殺人というなかなか巡り合わないものをテーマにしながら、どこか身近に起こりそうな人間関係を感じられるものが多いように思う。
私は「手紙」で受けた衝撃を機に、それから数年経った今でも東野作品の新作が出る度に、必ず手に取っている。どの作品も全く違うテーマであっても、日常のふとした時にシーンを思い返すようなものばかりで、私は全て気に入っている。
(30代女性)
う~ん… … …
はじめ 中 終わり どこ?