読書感想文「変身(東野圭吾)」

この本は一言でいえば「脳移植」の話である。タイトルの「変身」と「脳移植」というキーワードから大まかなあらすじは想像できると思うが、まさにそれである。純粋で優しくて、絵を描くことが好きだった青年が、不慮の事故により「脳移植」を受け、その後次第に 以前と打って変わって荒々しい性格に変貌していくのである。

 

あらすじ自体はシンプル明快だが、何しろテーマが重い。私は医療系の難しい話や、命にかかわるような重い小説は好んで読むことはないのだが、この作者「東野圭吾」が好きということもありその流れてこの本に手をだしてみたのだが、しかしどうだろう?こんな堅く、重いテーマの本が何ともスラスラ読めてしまう。

 

 

 

この読みやすさは、書かれているあらすじが想像に難くないので、展開や結末を想定できて読んでいるせいもあると思うのだが、それだけではない。読みやすさのポイントとしてはまず、一人称で話が進むため、客観的視点ではなく、話の当事者に感情移入はしないまでも自己を投影しやすいのだ。

 

読み始めは読者という雲の上の人間のように登場人物たちを見ていたはずなのに、いつの間にか完全に主人公に自己投影していた。そのため、自分自身が”変わっていく”という意識をありありと感じながら別人に変身していってしまう現実に恐怖するということが文字から実体験かのように自分に浸透するのである。

 

次に読みやすさのポイントとしては、脳移植を受け、その結果別の人格に支配されていく様子がとても丹念に描かれているところである。医療用語を知らずとも、もちろんこんな体験者が身近にいなくとも、状況や心理描写が丁寧で理解しやすい。

 

小説なので極端な性格の変貌を遂げる設定のため、凶暴で冷徹な精神異常者へ移り変わっていくのだが、これだけの異常者に変わっていったのにここで大きく変わった!という箇所があとで読み返しても言い切れない程に丁寧に描かれているのだ。

 

読んだ後には、読むこと自体はすらすらと進むが、心の疲労が激しかった。普段考えることのない「脳移植」というテーマだが、人の死とは何か?自分とは、自我とは何か?考えさせられます。ぜひ、心に少し余力がある時に読んでみてほしいと思います。

 

(30代女性)

 

 

 

 

変身 (講談社文庫)

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