読書感想文「リバース(湊かなえ)」

テレビドラマの評判が良かったのだが、リアルタイムで見れなかったので、原作本を読むことにした。内容や設定がドラマと原作では違っているようだが、原作での感想を述べたい。まず、私自信この作者の著書を読んだことが無くこの本が初めてだったが、いろんな著書が映画化されているとの事で、著者は知らずとも作品は知っていると言う状態であった。

 

告白も映画の宣伝が”生徒に娘は殺された”という、ちょっとショッキングなフレーズで気になっていたが、このリバースは目立たない主人公の深瀬が、大学時代の友人である広沢の事故死により、いろいろ調べていくうちに”殺した原因を作ったのは自分ではないか?”と考える物語だが、最後の一文にもある通り”広沢を殺したのは僕だったのか”で締めくくられている。

 

しかし本当にそばの花から取ったはちみつで、そばアレルギーだった広沢が発作を起こしたのかどうかは書かれていない。そのため、終わり方が妙にモヤモヤしてもどかしく感じた。(このようにモヤモヤした終わり方は、著者が嫌ミスの女王と呼ばれている所以らしいですが、確かに胸のつっかえが後々残る)因みにテレビでは事故死の理由については明らかになっているようだが。

 

なお、特に感情移入した部分としては、深瀬が大学の友だち4人と仲が良かったとの事で、各人の性格などが描かれているが、私は広沢タイプだなと感じた。中学や高校時代から常に一匹狼タイプで、いじめなど間違ったことや、人になびいたりつるんだりすることが嫌いで、自分の考えで行動することをモットーとしていた。

 

こう書くといかにもいい人に見えるが、実は逆である。広沢同様に何を考えているのか読めないらしく、自分の考えを表に出さないので接し方が分からないと言われたこともある。文中に当時付き合っていた美穂子に”海外に行きたい”という話をするが、なぜそのような気になったのか?

 

私は同じような事を考えたことがありますが、もっと自由にいろんな経験がしたいと思ったのではないか?と考えている。故に美穂子に”私はあなたにとって何?”と思われてしまうが、そういう部分では似ている感じがし他人事とは思えなかった。そのような意味で、どんどん感情移入できる面白い作品である。

 

(40代男性)


 

 

 

 

リバースは周りに気をつかいすぎるがゆえに引き起こされた悲劇だが、私自身、大学で働いていた時にそのことをものすごく強く痛感した。あまり「最近の」という言葉は使いたくないが、それでも自分が学生の頃とは大きな違いを感じるのため、あえて「最近の若者」と書かせてもらう。

 

まず始めに大学で働いて驚いたことが、最近の大学生は友達同士の関係にものすごく気をつかっているということだ。よくよく観察してみると、友人同士なのに本音を話さず、波風をたてないように常に緊張感を保っている。まるで戦時中のようだ、と感じるのと同時に、堂々と喧嘩もできずに気の毒だとも感じる。

 

また、いつも神経を使い注意を払っていることに尊敬の念さえ抱く。リバースの中で最も強く覚えているのは、お昼ご飯に何を食べるか、という場面だ。皆と一緒に蕎麦屋に入らず、ひとり別のレストランに食べに行く友人を自分勝手だと思う心情が何とも印象深い。

 

その時に、あの子が蕎麦アレルギーだと伝えていたら結果は大きく変わっていただろう。なぜ皆に配慮しアレルギーを隠し、自分勝手だと思われてでも別のレストランに行ったのか。友人も、自分勝手だと思ったならばその場で非難すれば良かったではないか。

 

そうすれば、アレルギーだと暴露することができ最悪の悲劇を防げたに違いない。 二つ目に気がかりなことは、いわゆるスクールカーストを気にしている学生が多いということだ。これは全員ではないし、最近に限ったことではなく昔からの慣習が大きく影響していると思われる。

 

自分と周囲の立ち位置を常に気にして、イケてるグループの中にいることがヒエラルキーの頂点なのだろうか。リバースの中でも、葬儀の際に地元の友人が、大学ではイケてる友達ができたみたいで良かったと話していたことが何とも印象深い。

 

ただただ気の合う友人とだけ過ごし、時には一人だけで過ごすことも許されるのが学生時代の大きな醍醐味だと思っていた私にとって、心に引っかかる習わしである。 本音を隠すことが優しさだと言う人もいるが、私はそうは思わない。最終的には誤解を招くことが多いことを知っているからだ。

 

そして誤解は人を傷つける。建前が悪いとは言わない。人を傷つけないためには、それも大切なものだからだ。ただ、自分を擁護するための嘘、本音隠しを「優しさ」という言葉に置き換えるのは良くないことだと心に留めておきたい。

 

(30代女性)


 

 

 

この小説ほど、犯人がとても気の毒に思ってしまったものはない。この小説の犯人が、広瀬と親友であった深瀬であったことにはとても驚いた。

 

しかも、広瀬を殺したのは「恨んでいたから」みたいな怨恨でもなく、快楽殺人みたいな狂った動機ではなく、広瀬が蕎麦アレルギーであったことを知らずに”蕎麦ハチミツ入りコーヒー”をあげてしまったという本当に救われない結末で深瀬がとても可哀そうだと思ってしまった。

 

自分のとても慕っていた親友をアレルギーのことは知らなかったとはいえ、自分の手で殺してしまったとは、なんて悲惨な事実なのだろうか。もし私が深瀬のような状況になってしまったとしたら、正直生きていく自信がない。もしかしたら自分で命を絶ってしまうかもしれない。

 

この小説は「広沢を殺したのは、…俺だったのか。」と”自分が親友を殺してしまった”とい事実を深瀬本人が気づいたところで終わるが、私は正直深瀬がこの後人生でどのような生き方を選んだのか?がとても気になる。「自分のせいで、意図はなかったにせよ親しい人物を殺してしまったと知ったら、人生を前向きに生きることなんてできるのだろうか?」

 

これが『リバース』を読み終えた直後に頭の中に浮かんできた疑問である。先述した通り私には前向きに生きていく自信がないのであるが、広瀬はこの後どうしたのだろうか?出頭して罪を償う? でも、広沢を殺してしまったのは過失であるので、刑事罰は受けられないかもしれない。

 

親に正直に話す? 広沢の両親がこの事実を知ったとき、広沢の親は深瀬に対して憎しみを抱くかもしれない。この場合、広瀬の親は死ぬまで憎しみを抱いて生きることとなる。これは果たして、広沢の両親にとって幸せなことなのだろうか?「広沢にぶんまで生きよう!」

 

これは世間体的にはいいかもしれないが、こんなふうに深瀬は人生に対して前向きに考えることができるだろうか?私なら絶対に無理だ。こんなふうに、自分なりに広瀬の今後の行動について考えてみたのだが、明るい未来は見えてこない。もしかしたら、広瀬には苦しい道しか残されていないのかもしれない… なんて酷なことなのだろうか?『リバース』を読み終えた後、こんなことを考えてしまった。

 

(20代男性)

 

 

 

 

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