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読書感想文「落日(湊かなえ)」

「落日」の読書感想文

湊かなえにハマっている私は、遅ればせながらようやく今月「落日」を読み終えた。読み終えた時のドロッとした感情が好きという、いささか悪趣味な私は、最高傑作と呼ばれる「落日」を読んで物足りなさを感じつつ人間の持つ浅はかさを痛感することになる。

いつも通り一気読みし、読み終えた後で頭と心の整理に入るのだが何とも言えない感情に支配されてしまい整理するのに二日も要してしまった。いつもの湊かなえらしさがない事には気づいていたものの、登場人物の誰にも感情移入できないのだ。

読んでいる私はただの傍観者だった。例えば、ニュース番組で流れてくる戦争の様子やいじめ被害を訴える親族の様子をどれも同じ体温で受け止めるという作業と同じ。そして、同じように私と言う人間の良い顔・悪い顔、誰にどのように受け止められているかなんか到底分からない。

被害者・加害者は分かりやすい表現だけれどそこにもまた曖昧な境界線がある。誰かにとっては恐ろしい存在でも、誰かにとっては愛しい恋人であるという極々当たり前のことを痛感させられたのだ。

普段、頭では理解できているこの当たり前の判断や物差しが「ほら、こういうことだ」といざ目の前に突き付けられた時、小さな絶望すら感じるのだ。これは、決して大袈裟ではなくミステリー小説でも人間の道徳は学ぶことができると言いたい。

過去と未来の間に都合の良い思い出を持ち続けて、生きる糧としている私は「事実」と「真実」を知った時にそれを希望に変えられる人間であるかと自分に問うた。到底、立ち向かえる人間ではないと思うから主人公達が輝き、眩しい存在として脳裏に刻まれているのである。

憧れとも違う「希望」としてだ。女性は夕日を見るとエネルギーに変わると以前聞いたことがある。男性は朝日だと。どういう理屈かは忘れたけれど、ラストの景色「落日」は誰の心にも刻みやすい希望と感じた。たまらなく、地元の海に落ちていく夕日が見たくなった。

(50代女性)

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