読書感想文「白ゆき姫殺人事件(湊かなえ)」

先入観を持って物事を見てしまう事の怖さを改めて感じる。この物語は、推理小説の定番である殺人事件をきっかけに始まっていく。そして、その事件の関係者やとりまく人間たちによる「証言」という形が人間の持つ本音を浮き彫りにしていく。
 
人が殺されるというような事件と身近に遭遇した時に、巻き込まれたくない・自分は無関係だと思う気持ちと、事件に首を突っ込みたくなる気持ちの両方が湧いてくるのだろう。そのどちらの感情もが登場人物それぞれに描かれていて、人間の汚さ、可愛さを同時に見せられているような感じだ。
 
巻き込まれたくない気持ちがありながら、積極的に事件に首を突っ込んでいく登場人物は皆、自分の中の正義に基づいて、正しいと思い込んで証言をしている。しかし、その全てが独りよがりで、客観的に見れば、こんなにも勝手な証言も無いよなと思う。その部分こそが、とてもリアルに人間を描いているように感じた。
 

 
 
そして、そんな勝手な証言を引き出しているのが、事件が起きてすぐから流された犯人はあいつだという根拠もない情報。それによって植えつけられる被疑者への先入観。誰だって、あの人は悪い人だと言われればそういう見方をしてしまう。ましてやネットや雑誌等で大きく報じられればなおさらだ。
 
怖さを感じるのは、その先入観が今まで自分が見て感じてきた相手への見方を一変させ、また、もともと良くない感情を抱いていた場合はその感情を一気に加速させるところだ。
 
今まで自分が直に触れ合ってきた相手の言葉も聞かずに、あの人実はこうだったのね、と簡単に決めつけてしまう様子や、あの人はやっぱり自分が思っていた通りの人間だったのだと確信を強めていく様子はとても生々しかった。自分だって先入観に振り回されているかもしれないという思いがして、自分を見つめ直してしまった。
 
人間は皆、自分が一番可愛くて、そんな目線で物事を見ていたらそりゃこんな無様な事になるよな、しかし、そんな目線で物事を見ない人間なんているのかなと思った。登場人物、総じてクズ。それでも憎めない。そう感じた。
 
(20代女性)
 
 
 
 

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