読書感想文「ポイズンドーター・ホーリーマザー(湊かなえ)」

湊かなえの小説を一度は読んだことがあるならわかってもらえると思うのだが、ある意味期待通りに期待を裏切ってくれるストーリーばかりである。テンポの良い短編小説が連続しているので、一晩で一気に読み切ってしまった。湊かなえの短編を読むのが初めてだったので、もっと読みたいのにもう終わりか、と物足りなさを感じてしまった。

 

それぞれの話をもっと深く読みたいと思うほど、引き込まれる話たちであった。その中で、タイトルにもなっている、母親と娘を書いた「ポイズンドーター」と「ホーリーマザー」は、2本立てのため読み応えがあった。ポイズンドーターとホーリーマザーの順になっているのが、素晴らしいと感じた。ポイズンドーターを読んでいる時は、娘の視点で過去を振り返る。

 

娘と一緒に「毒親」の姿を見ることで、親に対するうっとおしさを追体験した。自分も親にあんなことを言われたな、こんなことを言われたなと思い返し、子供にとって親の影響とは大きいとしみじみ感じた。自分は子供に好きなことをさせてあげたい、子供の意思を尊重してあげたいとすら思った。

 

物語の最後は、短編ということもあってかあっさりと終わったな、という感じであったが、続けて「ホーリーマザー」を読むと、視点が反転する。種明かしのように、母親の真意が語られ、さっきまで「悪」だと思っていた「毒親」に対する考えが変わった。母は娘を愛し、必死で守ろうとしていた。自分のような思いをしてほしくない、辛い目にあって欲しくない。

 

だからこそ毒親と言われるような行動をとっていた。自分が「母親」だったとしたら?と思うと、きっと同じ行動を取ってしまうと思った。子供を守りたいがためにきつく叱ることもするだろう。親として、当然のことだとすら思う。娘と母親、両方の視点から物語を読んで、どちらにも共感できる部分があった。

 

だからこそ、親とはどうあるべきなのか?小説を読んで数日経つが、いまだにぼんやりと考えている。後味が悪い、というよりは心に残る、考えさせられる作品であった。

 

(20代女性)


 

 

 

 

 

母親が娘を支配するパターンは大きく分けて二通りある。自分が成しえなかった幸せを娘には与えてあげたい、というパターンと、もう一つは自分が手に入れられなかった幸せを娘にくれてやるか、というものだ。この本は毒親といっても前者なので、同じ親として私はこの母親を擁護したい。親なら誰でも子供の幸せを願うものだ。

 

そしてその基準は、自分が歩んできた人生から推しはかって見当をつけるしかない。自分の失敗を娘が歩まないように、といった行動を取るのが毒親というのであれば、一体、子供の幸せをどう望んだら良いのだろうか。これまでの自分の人生の失敗は、子育てに何も役立ててはならないのだろうか。 問題なのは、後者のもう一つのパターンの方だ。

 

これは私の実母にあたる。娘の若さ、幸せに嫉妬して邪魔をしてくるのだからタチが悪い。しかも自分では気づいていないのか、娘の幸せを願う良い母親と思っているのだ。自分よりも良い結婚相手を連れてきたら反対するし、自分よりも幸せな子育てをさせてたまるかと、孫の世話は一切しない。今でも、会えば私が一方的に愚痴を聞く係で、完全に立場が逆転している。

 

幼い頃から、女の子らしい可愛い洋服は着せてもらえなかったし、褒められたり励まされたりといった記憶もない。 この本での母親は、幸せになってもらいたいという一心で女手一つで娘を育てあげたのに、その娘から毒親とテレビで言われ続けたのはさぞ辛かっただろう。決して娘の成功に嫉妬していたわけではないのに、母と娘というのは難しいものだ。

 

同性なのでシンクロしやすいのが問題なのかも知れない。幼少期には母親を頼らざるをえないので、お互いに依存状態に陥りやすいのだ。主人公が母親をバッシングするたびに、私の心は複雑だった。読み進めるごとに、「幸せを望まれているのだから良いじゃないか。」と思わずにはいられなかった。

 

自分が実母に「幸せを望まれていない。」という現実を叩きつけられているかのようだった。自分ではどうしてもそうハッキリと認めたくはなかったからだ。 主人公がいずれ母親になったとき、自分の行いをどう感じるのかが知りたい。完璧な親などいないし、自分を常に良い方向に導いてくれる存在でもない。結局主人公は、可愛がって育てられたゆえに、母親に甘えて「毒親」などということができたのだ。

 

(30代女性)

 

 

 

 

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湊 かなえ
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