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読書感想文「百貨の魔法(村山早紀)」

この物語りに出てくるデパートは、私の幼少期に見た風景である。物語りの舞台となる星野百貨店は、懐かしさで溢れていた。ドアマンに出迎えられ、優しいエレベーターガールのお姉さんに案内され、いつもの日常とはほんの少し違う空間に迷い込んだような錯覚を覚えた事を、この本を読んで改めて思い出したのだ。
 
そして、物語りでは時代の流れに逆らえずに閉店が決まった星野百貨店。ついつい自分が小さい頃から行っていた百貨店が閉店した時の事を、この物語りと重ねていた。登場人物は全員が善人だ。悪人などは一人も出てはこないのである。最初は何となく単調だと感じていたのだが、読み進めていく内に、まるで本当に星野百貨店にいるような錯覚を覚えたのだった。
 
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働いている人々は、閉店が囁かれる中でもいつもと同じように仕事をこなす。それがプロの仕事なのだという事を物語りの中で感じたのである。願いを叶えてくれるという白い子猫はそんな彼らの前だからこそ現れたのではないだろうか。子猫の存在は、まるで魔法や奇跡のようにしか思えないのかもしれないが、その登場の仕方もいわゆる幻想的ではなく、いつもの日常の中で不意に訪れるのだ。
 
だからこそ、逆に奇跡に思えるのかもしれない。派手さはないのに、何度でも読み返したくなる作品である事には間違いない。そして、それぞれが抱える悩みなどを知る前と知った後では、読み返した時の印象が変わっているのだ。魔法の子猫のステンドグラスは、きっと優しい眼差しで星野百貨店に集う人々を見ていたのだろう。そこには、様々なドラマがあった筈なのだ。
 
そして、人々もまた魔法の子猫のステンドグラスを見上げながら、百貨店を愛したのだろう。百貨店の創業者である星野誠一は、孫である結子に、大事な事を忘れていても、叱ってくれる人がいないから、自分で忘れないように気を付けなくてはいけないと語ったのだ。もしかしたら、星野誠一自信がもっとも孤独だったのかもしれないと思ったのである。そして、魔法の子猫は彼の心にも寄り添い続けていたのだろうと、想像させてくれたのだ。
 
(40代女性)
 
 
 

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