読書感想文「物語のおわり(湊かなえ)」

湊かなえさんの作品は読んだ後にまるで心臓を直接つかまれるかのような読後感を味わうものが多いけれど、この作品に関しては読んだ後の感じ方がほかの作品とはちょっと異なっていた。まずもって、主人公がまるでリレー形式の様な感じで物語が進んでいくので短編小説のような読みやすさがある。

 

なので、たくさんの時間を読書に割けない私の様なタイプにはもってこいの作品。けれど、冒頭に書かれた話を基盤に「この続きをあなたならどう続けるか?」をそれぞれの年代も立場も性別も異なる登場人物に考えさせるところが、とても興味を持てるし、登場人物の中には一人くらいは現在の自分だけでなく過去の自分に考え方や立場の似ている人も居るし、親しい人などの知人によく似た感じの人もいるかもしれない。

 

 

 

「物語の登場人物に自分や周りの人を投影して考えるとよい」とは学校の国語の授業中に感想文を書く際に言われたことではあるけれど、正直言って雲の上のようなとてつもなくお偉い人で、そもそも実際にいたことは確かだろうけれど共感を持つことすら恐れ多いような登場人物の話にどれだけの読者が自分の立場に投影できるのか、常々個人的には疑問を抱いていたわけだ。

 

そんな自分としては、この作品を読んだときに一番に思ったことは「この作品が読書感想文の対象作品だったらもうちょっとましな感想が持てたのではないかな」だった。もちろん自分の文書力の力量も有るから、とてつもない素晴らしいものが書けたとは思わないけれど少なくとももっと楽しく書けたのではないだろうか、という錯覚が起きてしまうほどだった。

 

この作品の登場人物はみんなそれぞれ個々に様々な事情を抱えていて、冒頭の結末の無い物語に色々な形で出会うけれど、まずもって原稿の状態でたすきがけリレーの様に受け継がれているところが何だかアナログっぽくて好感を持った。今時ならブログなどのネット媒体のほうが主流だけど、やはり紙媒体ならではの温かみというか人間臭さがあると思う。

 

そしてここでそもそも思うのが「自分なら旅の中であっただけの見知らぬ人からもらった物語、読んでみるだろうか、そして結末をまじめに考えるだろうか」という根底スタンスだ。これが無いと話がまず話が始まらない。ではまず旅支度の前に紙媒体のものを読む習慣から取り戻したい、そしてこの作品のようにもしも旅の途中で書きかけの結末の無い作品に出合うことができたなら是非とも自分なりの「おわり」を仕上げてみたいと思う。

 

(50代女性)

 

 

 

物語のおわり (朝日文庫)

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