読書感想文「母性(湊かなえ)」
この本は非常に胸が痛くなった。なぜなら主人公であるルミ子の気持ちが分かってしまうからだ。母親に対する思いというのは十人十色であるとおもうが、私の母親に対するそれと主人公ルミ子のそれとが非常に似ているのだ。母親に対して揺るがない愛情を抱いているルミ子。
それは自分の娘が産まれても変わることはなく、寧ろある事故により家が燃えてしまった際、娘ではなく母親を助けようとする。が、しかし母親によってそれは否定され娘を助けることになる。結果、母親は亡くなってしまうが、ルミ子の母親に対する愛情は消えることはない。わたしには娘こそいないが、このルミ子同様、母親に対する独占欲というか愛情が強すぎるという自負がある。
日頃から、もし母親に何か起きたらどうしようという不安がある。そんな時にこの本に出会い、あー、私もルミ子と同じなのかもしれない。私ももし娘がいたとして、娘を母親より愛することができないかもしれない。そんな気持ちがさらに強くなってしまった。この本は娘も、清佳の立場からもかかれていて、母親にちゃんと見てもらえていない、愛情を注がれていない悲しい、切ない思いが伝わってきて、胸を締め付けられる。
しかし、清佳はそんな母親に対してしっかりとした愛情を持っており、様々な場面で母親を守ろうとする。その健気な姿に更に胸を打たれた。意地の悪い祖母、叔母、争いごとには極力関わりたがらない父親。そして自分を本当に愛しているのかよく分からない母親。そんな奇妙な、いや、不気味な、でも現実にあり得そうな空気感が、本の中からひしひしと伝わってくる。
読み始めはルミ子に共感し、自分はおかしいのではないかと不安になり、後半は清佳の健気な姿に、頑張れ、頑張れと応援するような気持ちで読んでいた。読みきった後のなんとも言えない複雑な気持ちを無理矢理文字に起こすなら、「不安」だろうか。わたしもいつかルミ子のように母親という立場になったとき、清佳のように娘に辛い思いをさせるのではないかととても不安になった。この本は私にとって良い教訓になった。
(20代女性)
この小説は母性についても考えさせられる作品だ。娘よりも自分の母親の方が好きな主人公が出てくるのだが、母親のことを愛しすぎているので娘の気持ちになるととても心が痛んだ。母親が母性があり大きくなった娘のことを気にかけて面倒を見てあげているのは良いと思うが、娘の心配よりも母親のことを心配する主人公に読んでいる中で疑問が湧いた。
主人公は母親にずっと愛されてきたので自分に自信があって、自分のことを間違っていないと思っているところがあり読めば読むほど主人公の偏った世界観に引き込まれていってしまった。旦那が淡白で主人公の母親の溺愛っぷりに口を出さないところにも腹が立ち、父親のあり方についても考えさせられた。
住んでいた家が山の上にあったのですが、台風の土砂崩れに巻き込まれて娘と母親どちらを助けるかという場面で母親を選んだのにはかなり驚いた。私自身がこの小説を読んだときに妊婦だったので自分の娘を一番に助けないという場面が衝撃的だった。
家が潰れてしまってからは旦那の実家に家族ごと引っ越すのだが、姑がかなり癖があって嫌な人でどんどん主人公が自信を失っていき人生で失敗したことのない人が失敗するとどん底まで落ちてしまうんだなと思った。旦那の実家でいびられる母親のことを思って娘が姑に反抗するところには感動させられ、母親にあまり愛されていなくても子供は母親のことは好きなんだなと思った。
姑とその子供の関係も出てくるのですが、ここでも母性について考えさせられ、自分の子供には愛情を注ぐのに孫に愛情が無いこともあるんだなと驚かされた。それぞれの登場人物の嫌な部分がしっかりと描かれていて自分も母性という小説の世界にいるような感覚になった。
最後に精神的に追い詰められた娘は自殺未遂をするのだが、怖気ずく母親に姑が「それでも母親か!」といった言葉には感動させられた。親子の関係について自分自身も見つめ直すきっかけになるような本だ。
(20代女性)
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