読書感想文「贖罪(湊かなえ)」

この物語は非現実的なところはあるが、その漂う不気味さは何かが起こりそうなイメージを読者に抱かせてくれる。物語は、片田舎に都会から上流階級の人たちが引っ越しをしてきて事件が起きるというものである。事件に巻き込まれた子供たちはみんなが人殺しになってしまう。

 

田舎と都会のギャップをあるあるという感じで読み進めることができる。一番共感できたのは、被害者のお母さんの生き様だった。きっとバブル世代よりも少し年齢が上の人たちが設定なのかもしれないが、お金持ちのお嬢様の学生時代が容易に想像することができる。田舎者のクラスメートを少し、いや、だいぶ小ばかにしているところもありのままである。

 

JJ世代であるから仕方がないかもしれない。その方たちが田舎に来るとなると生活は無理が多い。今でも田舎と都会では生活の質が違う。田舎には何もない。私は田舎者なのでよくわかる。

 

物語の中で、お母さんが高級食器を日常に使い東京ではたくさんセレブママに囲まれていたのに,町ではお友達ができないところなど、ごもっともに思った。お母さんが田舎でお友達ができないのは生活の質が違うからだ。今の時代、セレブかどうかは別として、自分の学生時代までのお友達がいるかいないかで楽しい時間を過ごせるかどうかが決まるのかもしれない。

 

事件とはあまり関係ないながらこのお母さんの立場で読み入ってしまう。恐ろしいことではあるが現代社会のありようかもしれない。今の大人は自分のことばかりでだらしがない、、これでは子供たちはたまったものではない、この物語読んでそんなことを感じてしまう。

 

(40代女性)


 

 

 

 

この物語は子供のころにある殺人事件にかかわった4人の女性と、その事件で殺されたエミリちゃんという少女の母親との間のストーリーである。殺人事件の犠牲となった少女エミリちゃんは都会から引っ越してきた子で、引っ越し先ののどかな田舎町で4人の友人と遊んでいるときに通っていた小学校で殺害された。

 

殺害現場が田舎町であることがこの物語の不気味な部分の一つであると思う。私の勝手なイメージだが、田舎町はみんなが知り合いで見知らぬ人が現れると目立つため不審者は少ないのではないか、みんなが子供たちを守ろうとしているような感じがする。そんな平和なはずの田舎町で起こった小学生のエミリちゃんの殺人事件。

 

その時にエミリちゃんと一緒に遊んでいた4人の少女は、事件後のエミリちゃんの母親の言葉に縛られ、その後何年もその事件のことを引きずって生きていくことになる。もし自分がその中の一人だったなら…もし自分がいつも遊んでいる友達が殺されたら…いろんなことを考えながら事件の説明部分を読んでいた。

 

小学生のころの自分なら、友人が殺されたことを受け入れるのはなかなか難しいだろう。でも、もしかしたら殺されていたのは自分だったのかもしれないとか、とても不謹慎だが殺されたのが自分じゃなくてよかった、など物語に出てくる少女たちと同じことを思っただろう。

 

それぞれが、この事件に対する「償い」について考え、彼女たちなりにエミリちゃんの母親に浴びせられた「罪」を償えるような人生を歩んでいる。私ならどのように償うだろうか。客観的に見れば4人の少女たちに罪があるとは言えないだろう。4人の少女たちに重い言葉を浴びせたエミリちゃんの母親にも悪気があったわけではない。

 

しかしエミリちゃんの母親からしたら、自分の娘は殺されたのに、その時に一緒にいたはずの子たちからは犯人逮捕のための有力な情報も得られず、その子たちだけが幸せに大人になっていくことは許せなかったのだろう。どうしてうちの子だけが死ななければならなかったのか、と深い悲しみと憎しみの感情がこみあげてくるのに、肝心の犯人がわからない。

 

その怒りや悲しみをぶつける先がなかったのだろう。母親の心の叫びが読んでいてとても苦しい。この物語では、大人になった4人の少女たちが事件の時効寸前に「手紙」をきっかけに再び事件と向き合うことになり、事件後のそれぞれの人生を振り返っている。罪を犯す者、自分の生徒を守ろうとする者、姪っ子を守ろうとする者、許されない恋をした者…

 

4人それぞれが事件のことを忘れることなく生きる中で思い出される記憶のなかのかけらを少しずつつなぎ合わせることで事件の真相が少しずつ見えてくるのだが、それぞれの記憶が語られる部分は読んでいてすごく頭を使った。犯人は誰なのか…最初は犯人像は中年の男性ということしかわからないのだが少しずつイメージが具体化されていくため、一文字も見逃すことができない。

 

でも先が知りたくて早く読みたい。そんな葛藤と戦いながら読み進め、最後に犯人が浮かび上がってきたときには息が止まりそうだった。まさかこんなところに犯人が隠されていたなんて、と。どんなにちょっとした記憶にも必ず犯人につながるヒントがある。最後にはぞっとするような真実と、胸が張り裂けそうになるようなエミリちゃんの母親の後悔が描かれている。途中で中断することができず、一気に読み進め、最後にはため息がこぼれた。

 

(20代女性)


 

 

 

夏休みに小学4年生の少女エミリが殺された。そして、エミリと一緒に遊んでいた4人の少女達は、その事件によって人生が狂ってしまった。事件に巻き込まれた4人の少女とエゴイスティックなエミリの母親、麻子の物語である。4人の少女は事件で友達を失い、嫌な事件に関わってしまった、れっきとした被害者なのだ。

 

深い苦しみを与えられてしまった4人の少女がとても気の毒でならなかった。私がこの4人の少女の1人だったら、大人になってから、少女達と同じ様に考えられたとは思えない。4人の少女は、幼い友達の死にそれぞれが責任を感じてしまい、10年以上もの間、悩み苦しみ精神的に追い詰められてしまったのだ。

 

10歳の時に起こった事件で、恐ろしい犯人の顔を覚えていられる訳がない。怖くなって、その場から逃げ出したとしても、誰も彼女達を非難することは出来ない。それが例え、殺された少女の母親であってもだ。事件から3年後、犯人の手掛かりを何も思い出せない少女達に麻子はこんな内容のことを言い放ったのだ。

 

「あなたたちは人殺し、犯人を見つけなさい、それが出来ないなら私に償いなさい、どちらも出来ないなら、私はあなたたちに復讐する」こんな酷い事を中学1年生の少女達に言える神経が信じられない。相手が大人であればまだ分かる。思春期で、一番感じやすい年ごろの子供達にこんな事を言うなんて、大人気なさ過ぎる、を通り越して情けない。

 

麻子という人は根っからのお嬢様でそうなってしまったのだろうが、そんな言い訳で済む話ではないと思うのだ。良い言い方をすれば、麻子はとても要領が良い。昔から何でも自分に都合の良い様に考え、自分に都合の良い様に周りの人を誘導してしまう、とてもずる賢く、自分が得するなら人を騙す事さえ悪いと思っていない、いや悪い事をしたとは気付いていないのか。

 

麻子が人生を狂わせたのは、4人の少女だけでなくその家族、娘、旦那他、一体何人の人を苦しめたのだろう。これはフィクションだ。でも、もし本当にこの事件が有ったとしたら、私は麻子が許せない。麻子の様な人がそんなに多く居るとは思えないが、自分の近くには絶対いて欲しくない。この小説は、苦しみを与えられても、4人の少女達の様に寛大な考えを持とう、と言っているのだろうか。

 

(50代女性)

 

 

 

 

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