読書感想文「豆の上で眠る(湊かなえ)」

主人公の結以子の、どうしたらいいかわからないもどかしさがなんとも言えない切ない気持ちになる。私だけが間違っているのか?という不安と、家族の中の疎外感。結以子の幼少期の回想と現在を交互に行き来する話だ。序盤に幼少期では、結以子より親に愛されている色白で勉強が出来て少し病弱なかわいい姉、万佑子との仲良しで常に一緒にいる場面が描写されている。

 

しかし、現在では結以子は万佑子と仲良しどころか、できるだけ避けている。万佑子は結以子と変わらず接しているが、結以子が一方的に万佑子を避けている、と捉えさせるような描写だ。読み始めてすぐに違和感を感じ、どんどん先が気になる小説だ。読み進めても読み進めても、なかなか違和感の種は明かされない。むしろ違和感が増え続ける。

 

最後まで読まないと違和感が解消しないので、先が気になって一気読みしてしまった。ただ、読んでいて気分が良くなる描写は一切なかった。と思う。なぜなら、幼少期に親は結以子より万祐子に愛を注いでいたため、どの場面を切り取っても結以子は親からの愛情を一身に受けていないからだ。

 

それでも結以子は親の機嫌を損ねないように、愛されるように振舞っていた。子供が親に気を使いながら生活することほど、胸がきゅっと締め付けられるような切ない思いをすることはないと思う。現在でも、大人になった結以子が幼少期の万佑子と現在の万佑子の違和感についてずっと考え込み両親との関係も良好ではないように伺えた。

 

これは家族の、姉妹のお話だが、ハートフル要素なしのミステリーなんだから、と言い聞かせないと読破はできなかったと思う。そんな内容なので、読後感もあまり良くはなかった。ミステリーの謎解きも少し強引かな?とは思ったが、読み終えたあとの達成感と、姉妹の今後の関係への期待で、全体的に読んでよかったと思える小説だった。

 

(20代女性)


 

 

 

 

自分の姉が自分の本当の姉ではないのではないか、そのように思いながら生きるとはどのような気持ちなのか、正直私には想像できない。なぜなら、私はこれまで生きてきて自分の姉妹を自分の本当の姉妹ではないのではないだろうか、などと考えたことがないからである。

 

しかも、それがある出来事を境に、となると、自分が感じた違和感の原因をひたすら探したくなるのではないだろうか。私であれば、日々なぜだろうとひたすら悩み、そんなことを考える自分自身がおかしいのではないかとも思い、精神的なバランスを崩してしまうかもしれない。

 

また、違和感を感じられ、そのことに気がついているというのも、なかなか辛いものがあるように思われる。本物の姉だと認めてもらいたい、その思いが強ければ強いほど、その心のうちはいかばかりであろうか。人の一瞬の魔がさした行動が、その後の人々の生活や心を霧に包まれた日々にしてしまうことを思うと、恐ろしいと思わざるを得ない。

 

誰しも魔がさすような瞬間があると思うが、それを自制できるのもまた人間ではないだろうか。そのことを胸に留めておかなければと強く心に誓いたいと思った。また、真実とは本物とはなんなのかと改めて聞かれると明確に答えられない自分に少し戸惑いを覚える。人の数だけ真実があるようにも思うし、真実は一つだと思うときもある。

 

人の心は移り変わり、一定ではない。だからこそ、真実も変わりゆくこともあるかもしれないし、本物の定義も変わることもあるのかもしれない。また、愛というものは時に恐ろしい行動に人を走らせてしまうこともあるのだと思った。愛による行動が誰かの悲劇を生むことも、また、あるのだと思うと、愛とはなんなのだろうと考えずにはいられない。

 

そして、真実というものがあるとするならば、それを明らかにしてしまうことは、善なのか悪なのか考えてしまう。正解を見つけることは難しく、果たして正解など存在するのだろうかと私は一人物思いに耽ったのである。

 

(30代女性)

 

 

 

 

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