読書感想文「告白(湊かなえ)」

第一章での牛乳ホームルームの内容が衝撃的で、どんどん読みすすめてしまった。牛乳にHIV患者の血液を混入して感染するのかがとても疑問だったが、結局その行為は未然に防がれていたらしく不問に帰された。

 

というか口内粘膜も感染経路になるとはいえ、ヒトの体から離れて牛乳に混ぜられたHIVウイルスは感染力をなくしているので、感染しないと思う。しかし、この牛乳を飲んだのは中学一年生。HIVがどのように感染するのか、どのような病気なのかについての知識が足りない。

 

無知な中学生らしさを描写するにはうってつけの方法だったと思う。また、美月の「私はもう一人のルナ」発言も、まさに中学生!中二病!だと思った。そして、この作品で描かれる三つの母子のカタチには考えさせられるものがあった。中学生という思春期を迎える子どもに対して、どのように接するか。

 

直樹親子の場合は、反抗することなく寧ろ互いを大切に想いあう関係だった。これは甘やかしとも言える。広くて綺麗な家に住み、大切に育てられてきたが「おまえは出来損ない」という言葉で簡単に挫折してしまう。

 

いっぽう、修也の場合は、思春期に母親が不在であるがゆえに、母親からの愛情を求めて滅茶苦茶な行動に出てしまう。くっつきすぎず、また離れすぎずの、適度な母子の距離感が難しい。そして、森口先生と愛美ちゃん。我が子に愛情を注ぎながら、他人の子にどう接するかを考えさせられた。

 

自分の子どもは本当にかわいい。それはこの話に出てきた三人の母親すべて一致している。しかし、「自分の子ども」がかわいいことと「子ども」がかわいいこととは違うと思う。子どもを産み、育てることの大変さは同じ母親としてわかっているものの、自分の子どもが傷つけられたとき、他人の子に復讐せずにはいられないんだろうなと思った。

 

他人の子を、我が子のようにかわいがることはできない。それが森口先生の淡々としたホームルームから伝わってきた。私は、そういう先生がいてもいいと思う。熱血教師を目指すウェルテルと対比させられていたが、生徒たちの反応もウェルテルにはイマイチだったように感じる。

 

そこがまた見事に中学生らしい。冷めた先生の授業ではケータイなどで遊び、トモダチ先生にはなめてかかる、どちらにも心を開くわけではない。やはり、子どもが心を開ける母親の存在は大きいのだと思った。

 

(30代女性)


 

 

 

湊かなえさんの告白。とにかく読んで衝撃的だった。この本は本屋さん大賞を受賞した本である。芥川賞、直木賞など本に関しては色々な賞が設けられているが、私が一番信頼しているのが本屋さん大賞を受賞した本である。まず受賞作には外れがないのである。

 

それどころか本が大好きな書店の店員さんが選ぶだけあってかなりインパクトの強い作品が多いのも特徴である。そしてこの告白という作品は湊かなえさんのデビュー作というから驚きである。ビギナーズラックかと思いきや彼女は次々と衝撃的な作品を生み出しているのでこれは実力でとった賞であることに間違いない。

 

「告白」は主人公の女性教師の子どもが何者かに殺害されるという事件の謎解きがストーリーの軸になっている。女性特有のだらだらとしゃべる感じをそのまま文章にした、今まで読んだことのない文体にまず面食らうというか驚いた。最初は読みにくい文だと思っていたが、なぜか読んでいてくせになる文体なのだ。

 

そして内容が衝撃的すぎて一気に読み進めてしまう小説である。いったいどんな思考回路でこの小説の案を考えたのだろうか?その小説の書き方もかなり独特で、一つの事件を時系列に客観的に見るということではなく、関わる人の目線ごとで章が構成されていているのである。

 

その各章に登場するキャラクターの個性も強くてそれぞれの世界観に引き込まれてしまう。キャラクターの個性が強い割には「あーこういう、うざい先生いるよな」とか意外に自分の近くにいるような人物像だったりするから余計に面白いし、そこがこの小説の怖さだったりもする。

 

そして最終章にはそれぞれの目線から見た事件が絡まりあって結末を迎えるというスタイルでラストの一文まで気を抜けない小説である。この湊かなえさんがデビューしてから、彼女の小説のスタイルで書く作家さんが増えたように思うのは私だけだろうか。読者だけではなく小説界にもかなりのインパクトを与えた湊かなえさんの「告白」何度読んでも楽しめる作品である。

 

(40代女性)


 

 

 

少年法。どんなにひどい事をしても更生する事を信じ子供は少年法に守られているのだ。近年、少年法も改正されているが、少年法の裏で涙を飲んでいる被害者も多くいる。告白は、被害者の復讐が軽快なテンポで描かれているである。

 

終業式で、自分の教え子の罪を暴く担任森口。あくまで冷静に独り言のように出来事を話していく。このホームルームの告白からどんどんのめり込み一気に読み終えた。この小説は、子供を殺された主人公が先生という立場と子供を亡くした被害者の立場の両方を持って話が進行していく。

 

淡々としたおのおのの独白により状況が明らかになっていくのである。子を持つ親の立場から読むと先生の本音にリアリティーがあり、先生という職業は、聖職者ではなく普通の人間なんだと思うと子供を預けるのが少し怖い。犯人修哉君(A君)直樹君(B君)を徐々に精神的に追い詰めていく様が、生徒の個人情報を知ることができる先生ならではである。

 

もともとサイコパスな修哉が担任により犯人と知らされクラスメイトにどんどんいじめられていく。そのシーンは、修哉にも、正義感をかざししかし結局いじめを楽しむクラスメイトにも感情移入できず、ただただ嫌なシーンだ。修哉がなぜサイコパスなのか、彼の生い立ちも丁寧に描かれていたが結局ガールフレンドまで簡単に殺め同情する気にもならない。

 

また、自分のした事と自分の死の恐怖を覚え不登校になり精神的に追い詰められた直樹は、最終的に母を殺す「警察に捕まりたかったから」直樹は浅はかで幼稚だが、普通にどこにでもいるタイプの子。どんな子も加害者になりうる描写は、違った意味でとても怖い。

 

事件そのものは、身近なものではなく自分とは関係ない物語なのに、なぜかリアリティーがあるのは、子供達のキャラクターが普通の子だからなのか。

 

最後のシーンは、どちらともとれる。担任森口は、修哉の作った爆弾を修哉の母のいる研究所で修哉により爆破させたのは、本当なのか。それとも精神的におびやかしただけなのか。その真相は読書が勝手に想像し、楽しめるようになっているのだ。私はおびやかしただけだと思える。

 

もともと夫も失い、子を失い正気では無くなっているのは確かだか、この担任森口先生は、そこまで身を滅ぼす事はしない人だと思うのだ。多分このあと、一度は、辞職したものの、しれっと別の中学で復職し、心に闇を抱いたまま教師を続けている様が目に浮かぶのだ。何の救いもないラストシーンは、後味が悪いのである。

 

(40代女性)

 

 

 

 

 

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