「昨日がなければ明日もない」の読書感想文
この本は、「誰かsomebody」から続く杉村三郎シリーズの第5作目である。前作から私立探偵として活動を始めた杉村三郎の元に舞い込む依頼を、短編三作という形で収録している。全編を通してそれぞれ少し困った女性が登場する。
一番最初に収録されていた「絶対零度」と最後に収録されていた「昨日がなければ明日もない」は、主人公である三郎と同様の気持ちになった。「絶対零度」では自殺未遂をして入院しているという娘に面会させてもらえない母親が登場する。その理由を調査するために三郎が動き出すのだが、調査が進むごとにかなりハラハラさせられた。
予想もしなかった調査結果と、その後の展開にページをめくる手が止まらなかった。「昨日がなければ明日もない」は16歳の子供を持つ奔放な女性が登場する。子供のために調査を始める三郎だったが、この女性があまりにも自分本位で読んでいる間何度も頭を抱えた。
その後の展開も悪い結果の積み重ねといった感じで、まるで三郎と一緒に調査をしたような疲労感が感じられた。この二つの結末を考えると、間に挟まっている「華燭」はまだ救いのある話だったと思う。
三郎は近所に住む家族から、姪の結婚式に出席する娘に付き添って欲しいという依頼を受ける。その結果、思ってもいない事態が発生するのだが比較的希望のある終わり方をする。「絶対零度」の次だったため、これも悪い結果だったらどうしようと思いながら読み進んでいたため、かなりホッとした。
杉村三郎は怒りや嫌な思いを感じることはあっても、結局最後まで調査を完遂してしまうほどのお人好しだ。そのせいか周りの人間も優しい人々ばかりである。いい人が多い反面、依頼人やそこで出会う人々がとんでもなかったりする。
そんな人々に出会うたび三郎は大丈夫だろうかとハラハラしてしまうのだが、必要以上に引きずる様子もなくいつも安心する。また、離婚したことで離れて暮らすことになった娘の成長も要所要所で見られ、その様子にほっこりする場面もある。
シリーズもののため今後は娘の成長はもちろん、体調が徐々に悪くなり始めている義父の話も描かれるのだと予想している。それも楽しみである。また、今作では風変わりな刑事も登場する。今後彼が三郎とどのように関わってくるのかも非常に気になる。
(20代女性)
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