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読書感想文「影に対して(遠藤周作)」

「影に対して」の読書感想文

遠藤周作の没後しばらくして見つかった原稿の書籍化と聞いてずっと読みたいと思っていた作品である。影というのは、自身の生い立ち、家族への暗い思いの隠喩であり、どこか私小説を読んでいるような感激があった。なかでも心に残っているのは、中国に住んでいた子どもの頃の話だ。

まだ両親が結婚していた家庭での風景で、小学校から著者が帰宅すると母親がバイオリン練習をしていて、お菓子も食べられない。声をかけてはいけないのでずっと母を見ている。数時間が経ったのち父が帰宅し、「お前、寂しくないか」と聞くところは、まるで父親が自分の気持ちを自分に問うているような印象を受ける。

小学生時分の思い出のワンシーンのなかに、父親の悲壮感が残っているなんて、遠藤周作は早熟な子どもだった違いないと思った。また、筆者が大きくなってからも離婚し一人で生活している母から採算、手紙がくる。その内容は「アスハルトの道を歩くより自分の足跡が残る砂の道をあるきなさい」というメッセージで印象的であった。

芸術家として、一人の女性がその時代の家庭人としては収まりきらなかったわけではあるが、生への情熱のようなものを感じ、また自分のフラストレーションをまっすぐに躊躇することなく息子にぶつけるところにもやるせなさを感じた。

母は自分の人生で、芸術的な情熱を現実的な成功と結びつけることができなかったわけだが、のちのち後世で筆者が息子としてそれ昇華した事実を、遠藤周作の没後読むことができたことに感動した。遠藤周作は日本を代表する芸術家ですよとお母様に伝えたい。

最後に印象的なだったのは、父親が再婚相手と幸せそうに暮らすことに嫌悪感を抱いているシーンだ。おとなになって遠藤周作自身も自分の子供を連れて父親いる家に会いに行く。

父親もその再婚相手も、孫として自分の子どもの溺愛してくれる様子を見ながら、母親は無惨にアパートで孤独死したこと、よくも孫とのうのうと遊べるな、遊ばせに来ているのにも関わらず、嫌気指している。遠藤周作は母親の影響強く受けた方だったと言っても過言ではないと感じた。

(30代女性)

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