読書感想文「長い長い殺人(宮部みゆき)」

長い長い殺人を読んでまず最初に興味を惹かれたのは、登場人物たちの財布が語り部となっていることである。10人の主要登場人物の財布は、自分の主人に起きている出来事を部分的に把握している。部分的に、というのは、財布がどこかに仕舞われていれば、現場を見ることはできず、声だけ聞こえるからである。

 

この発想は非常に斬新で、今までにない語り部だったため興味を持った。そしてストーリーである。ある人物が殺され、その人物には多額の保険金がかけられている、しかしその容疑者にはアリバイがある、というよくある展開ではあった。しかし、真犯人を自分なりに推理しながら読むのであるが、読めば読むほど分からないのである。

 

また、一つの殺人事件を巡って、10人もの人物とその財布が登場するのも興味深いのだ。と言うのも、登場人物たちの性格、今までの人生、考え方、どのように事件に関係しているのか、などがとても丁寧に細かく描かれているのだ。私は特に、11歳の少年小宮雅樹が印象に残っている。

 

小宮雅樹はこの殺人の被害者の一人、早苗の甥っ子である。小宮雅樹は、とても素直で正義感の強い少年なのであろうが、まだ子どもなので大人の前ではとても非力である。小宮雅樹は大好きな早苗の身の危険を、早苗以外では唯一気づいており、早苗を守るために行動したにも関わらず、力及ばなかった。

 

このあたりの小宮雅樹の焦り、絶望感、悲しみの描写は胸にくるものがあった。そしてラストシーンでは、この小説の主要人物である、刑事と雅樹少年が語り合うシーンがある。このあたりは、少年がこれから大人になっていく希望を残したものになり、安堵したものである。

 

この小説はストーリーも確かなものであり、読了後は満足した気持ちになったが、同時に自分の財布は自分をどのように見ているのだろうか?という不思議な疑問もわいてきたのだ。読了後にこのような気持ちになる小説もなかなかなく、珍しいものである。

 

(30代女性)

 

 

 

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宮部 みゆき
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