読書感想文「クロスファイア(宮部みゆき)」
炎を操る超能力者の女性が法で裁かれない犯罪者を焼き殺していくミステリーである。法によって裁かれない犯罪者を見つけて、自らの能力で殺して行く主人公、青木順子と、論理的に説明のつかない炎の力を調べていこうとする石津、牧原刑事と、主人公を傘下に加えようとする超能力者集団、ガーディアン。
それぞれに属する人物を心象豊かに書いてある一冊であった。上下セットミステリーと言われると、長さが伝わってきて、読む気を失うという方も多いが、私は通勤、通学、および待ち時間の間だけでも簡単に読むことが出来た。
「法に裁かれない「悪」を超越的な力を持った人物が自ら裁いていく」「主人公を追いかける相手が同じように犯罪者を裁こうとする刑事」「物語を読み進めれば進めるほど自分と同じ特別な力、あるいはそれを欲する者が現れる」など、漫画「DEATH NOTE」に似ている点があり、私はこの漫画が好きだったことに相まって大いに読んでいて爽快感があり、楽しめた。
最初私は、ミステリーに超能力は相容れないのではないかと思っていたが、最後の最期で出てくる予想を覆す人物の正体など、読み進んでみると意外なほどミステリーとしての辻褄が合っていたのに驚いた。また、上述の通り炎を出し、犯罪者が焼け死んでいく瞬間の描写の、炎の熱さと残酷さと美しさを同時に語っているところに引き込まれた。
そういった超能力という物の強さだけではなく、犯罪者によって殺された人物の家族や、幼き頃の主人公が謝って超能力で殺してしまった人物の兄弟など、意外な人物が意外な形でつながっているという世間の狭さや、それぞれの身内を殺した犯罪者に対する想い、登場人物の人間としての弱さなど、一人一人の人間やその家族が丁寧に書き綴られている点も、人間らしさを感じられた。
特に、私はもう一人の主人公ともいえる、石津刑事という人物の、「正義のためとはいえ、犯罪者を殺してしまうのだけはいけない」という決意を貫こうとする姿勢に魅了された。
(20代男性)
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