「ブレイブストーリー」の読書感想文
私が初めてこの本と出会った時は主人公の亘と同世代で理由は異なるものの両親の離婚について苦しんでいたり、優しい親戚がいたりする境遇が似ていて共感を持っていた。そのため亘の冒険をより自分のことのように感じていた。
私がこの本を読んで何よりも驚いたことは恨んだり、憎んだりする感情は悪い感情として排除すべきでない、ということだった。亘が浮気をして出て行った父親を憎む一方で自分にとって大切な父親であり、憎むべきではない、そんな感情などない、と排除した結果、世界にもう一人の自分が生まれ、暴挙に出てしまう。
この場面で私は辛い感情と同時にそのもう一人の自分が抑えていた感情をうまく爆発させてることに快感を覚えていた。しかしながら、亘の父親の写し鏡のような存在を攻撃してしまったことに対し罪悪感を持っていることにも共感し、また亘と同じくその快感を持ってはいけない感情なのだとも感じていた。
終盤に亘のもう一人の自分と戦い、相手を攻撃することで自分も傷つくことに気づき、もう一人の自分を受け入れ勝負は決し、亘がもう一人の自分に対しおかえり、と言った場面で初めて憎しみや恨みなどの黒い感情を受け入れてもいいことを知った。私はそれまで特に肉親に対して恨みの感情を持ってはいけない、そんな感情を抱くなんて私は悪い子供であると思っていた。
しかし、この部分を読んで恨んでいる自分も自分自身であり、排除する必要はないと、この本を読んでそう思うことができるようになった。私は亘は強い、と感じている。なぜなら現実を変えるために願い事を一つだけ叶えられる女神に会うために旅をしていた彼が、叶えたい願い事を亘が旅をした世界の危機を目の当たりにして現実を変えることではなく、亘が旅をした世界を救うことにしたからである。
確かに共に旅をした仲間や思い出はあるだろう。しかしこれから現実に帰るという状況で迷うことなくこれから直面する辛い現実に向き合い、世界を救うことを選ぶというのはとても辛い選択なのではないかと感じた。亘はこの世界は自分自身でもあるからそうすべきだと言っていたが、もし自分がこういった選択を迫られて亘のように迷うことなく選べるかと言われればできる自信はない。
また、このような状況で他人を思いやれるところも亘は強いと思った。亘の周りには亘と同じように辛い状況下に置かれている子供がいる。理不尽なことで家族を失ってしまい、亘と同じく願い事を叶えるために冒険をしている美鶴、酷い犯罪に遭い心が壊れてしまった香織。亘は自分にも辛い現実が降りかかり、必死に、一生懸命旅をしている中でこの2人をずっと気遣っていた。
私は余裕がない状態でどれだけ人を気遣うことができるのか。他人に親切にできるのか。実行しようとしてもそれができる自信はない。だが私も亘のように他人を気遣う優しさを持っていたい。私は亘よりももう10歳以上も年上になったが、まだ亘のように強くはなれていない。しかしその弱さを受け入れ、立ち向かっていこうとこの本を思い出しながら心に決めている。
(20代女性)
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