読書感想文「名もなき毒(宮部みゆき)」

今一冊の本を読んでいる。宮部みゆき先生の「名もなき毒」という本である。この本はドラマ化もされ御存知の方も多いと思う。ドラマをチラリと見て興味を持ったが仕事も忙しく一日中、上司の理不尽な怒りを、どう回避するか?なんて事ばかりを考えて過ごしていた私は中々本をゆっくりと読む時間がなかったが、二年前に仕事を辞めてからは本を読める時間が出来たので原作を手に取ってみたのである。

 

この本の中で「普通とは何か?」という問い掛けの部分があり、それに感じ入って文を書いている。結論から言うと私が思うに「普通」というもは人それぞれ違う。主人公である杉村三郎には仕事があり守るべき家族…妻と娘がいて帰るべき家がある順風満帆な人生、それが彼にとっての「普通」である。それに比べ今の私には仕事も伴侶も財産もないが、帰る家があり炬燵でノンビリと過ごせている。

 

仕事がないなんて「普通じゃない」と言われる方もいるだろう。伴侶もいないとは「寂しい人だ」と言う方もいるだろうが、でもこれが今の私には「普通」なのだ。この本に出てくる「原田いずみ」という女性は嘘をつき周囲の人間とトラブルを起こし、その果てに人を死に追いやった事もあるが、彼女にとっては、そうした行動も「普通」で彼女の世界では「正義」でもある。ただ自己中心的なだけではなく周囲の人間を破滅に追い込む様な人間は確かにいる。

 

 

私が十五年間仕事をしていた事務所の女性上司も、そうした種類の人間だった。精神的、肉体的にも相手を追い込んで、それを楽しみ自分の正義を振りかざす…原田いずみも同じだ。杉村に対して嫌がらせの電話や義父である今多コンツェルンの会長である嘉親に嘘を並べ立てた手紙を送り訴訟を起こすと脅して精神的にジワジワと追い込んだ挙句に家族に危害を加えようと企てる・・・私はこうしたシーンを読んで戦慄を覚えた。私の上司だった女性と全く同じやり口だったからだ。

 

しかし、こうした種類の人間にとってはそれが正しい事であり「普通」なのだ。自分が間違っているなどとは微塵も考えないのである。私はこの本を通し思い出し思い知らされたのは、こうした人間は世の中に「普通」に存在し溶け込んで生活しているが突然牙を剝くのだ。原田いずみは本の中で杉村の娘を人質に取り本当に危害を加えていたが、私は何とか家族に危害を加えられる事なく現在「普通」に過ごせている。

 

(40代女性)

 

[amazonjs asin=”4167549093″ locale=”JP” title=”名もなき毒 (文春文庫)”]

[sc:post-under-massage ]

コメントを残す

シェアする