「幕末純情伝―龍馬を斬った女」の読書感想文
つかこうへいの作品はあまり読んだことがない。映画である『蒲田行進曲』を観たくらいだ。だから、ほぼ予備知識無く、「まぁ、『蒲田行進曲』みたいなノリだろう。」と思って読み始めた。するとどうだろうか。ある意味『蒲田行進曲』のノリではあった。なんせ歴史上の人物である新撰組の沖田総司が女であるというとんでも設定なのだから。しかし、読み進めていくうちに、この設定ではないと伝えられないものがあるとわかってくるのである。
主人公である沖田総司は愛する土方の為、ひたすら人を斬ってきた。そして、その愛する人の為に血に染めた手を拒絶され、最後はその手で、土方自身を殺してしまう。その直後に沖田も新政府軍によって殺されてしまうわけだが、このラストに至るまで、沖田はひたすら散々な目にあう。土方から何度も酷い扱いを受け、ひたすら人を殺しまくり、桂に玩具にされ、遊女にもなる。
しかしそれら全ては土方を思っての行動によるものだった。どんな目にあっても土方のことを思い続ける。こう並べるとおかしい、狂っていると思ってしまうかもそれない。しかし、これは以外にも現代の恋愛観にも当てはまるのではないかと思う。
私の友人が以前「彼の為なら何でもしてあげたい。」と漫画みたいな事を言っていた。それを聞いて私は「なんだそれ。」と思っていたが、この小説を読み終えた後にふとこの言葉が浮かんだのだ。要するに、彼女が吐いたあと言葉の真意はこういうことなのかもしれない、と。
沖田は土方の為に何でもした。こう見るとまるで彼女は見返りを求めていないかのように思えるが、決してそういう訳では無い。彼女は何らかの見返りが欲しかった。土方に振り向いてもらいたかった。優しくされたかった。タダでは動かないつもりだった。しかし、結果として見返りは殆ど全くといっていいほど無かった。しかし、彼女は彼の為に動いたのである。どんな辛い目にあっても。私の友人のあの言葉の真意はそういう所にあったのだろう。
「女、恋に狂わば、歴史をも覆す」という台詞が舞台版『幕末純情伝』にあるが、それは現代でも変わらず、人を愛した時にこそ、その人のために何でも出来る女の強さが込められているのである。
(10代女性)
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