読書感想文「娘に語る祖国(つかこうへい)」

在日朝鮮人という存在を知り、自分がいかに楽な環境下に育ったのかを思い知らされる。
 
在日朝鮮人は日本人からはやれ朝鮮人だと馬鹿にされ、韓国人からはやれ裏切り者と非難され、どちらにも安定した身のより場を置けない苦しみを味わうのである。「自分の祖国とはいったいどこなのだろうか。」なんていう疑問は、日本人の間に産まれ何事もなく日本人になれた私が到底抱いたこともない疑問である。それ故に在日朝鮮人として苦しんで戦ってきた、つかこうへいの生んだ言葉の情熱さには敵わないものを感じる。
 
パパがママと結婚したわけは、ママの一途にパパを想う汚れのない瞳の中に、「祖国」を見たからです。愛する者の瞳の中に祖国を見出すという言葉。「祖国」とは国ではなく、彼にとって人なのである。「祖国」とは何かなどに悩んだことはないが、この言葉は私の胸を刺した。どちらの国にも身を置けないから仕方なしに、人を頼りにしたというのではない、人こそ我が身の置き場と感じたつかこうへいのこの言葉。

 
 
このように彼に思わせた奥様の愛情に憧れを感じた。私も自分の「祖国」だと思える人に出会い、そしてその人にも「祖国」だと思ってもらえるだけの愛情を注いであげられるだろうか。「愛とは何か」という永遠のテーマに対して一つの答えのようであり、取り組んでいきたい課題だと思えたのである。
 
そして、自分が取り組むだけでなく語り継いでいきたい言葉でもあるのだ。つかこうへいが「娘に語る」としたように、自分もこのことを自分の子供に伝え、自分の子供が取り組んでいってくれることを願う。つかこうへいの家族、韓国での芝居の話のようにドラマチックなことは私の人生からは語れないので、そこはこの本を渡して便乗しようと思うが、自分が夫とその子供をどれだけ「祖国」として愛したか、それは自分の言葉で伝えられると思う。
 
なぜなら、つかこうへいの娘に語る一つ一つの言葉はただ温かく、この言葉たちは劇作家としての情熱的な言葉とは違う、単に娘を想う父の言葉であるからである。ならば、私も母として子供に語るということは可能だと思うのである。
 
(20代女性)
 
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