この本を手にとったのは、日本版監修者の名前に「重松清」とあったからだった。重松清の小説と言えば、読後しばらくはその中身について自分と向き合いながらも考えこんでしまうようなものが多い。少し自分と向き合う時間をとりたいと思っていたので、ちょうど良い機会だと思ってすぐに購入した。
『よいこととわるいことって、なに?』というタイトルからも分かるように、これは哲学に関する本だ。中身は6構成で、ルール、やさしさ、ききわけ、ことば、自由、思いやりのそれぞれについて、絵や短い文章で問いが出されている。どれも大好きなのに間違いはないが、中でも私が一番印象に残っているのは、最初に出てきたルールについてだ。
「おなかがへったら、どろぼうしてもいいとおもう?」という誰にでも起こる生理現象のことを出して問いをたてている。この問いに対して、「おなかがペコペコで死にそうだったとしても?」「いっぱいもってるひとからなら、いいかも。」というように、あたかも誰かが自分の声に代わって話しているようなつぶやきが紹介されていくのだが、それが自分の気づかないような心の奥底にあったりするから面白い。
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そういえば、自分って無意識にそんなこと考えているのかも、と思ってしまうのだ。さらに、これが一番印象に残っている理由は、小学生の頃にお祖父さんのへそくりを見つけて、駄菓子を買うためにそこからお金を盗んでしまった経験があるからかもしれない。ほんの少し、駄菓子を買うくらいならバレないだろう。と思って盗んでしまったが、やはりそういう悪事は一度すると癖になってしまうのか、ほんの少しが何度か続き、ついにはバレてしまった。
そのときにはかなり叱られてしまったが、本にはこんな言葉がある。「だめだよ。おまわりさんにつかまっちゃうもん。そうだね、でも…もし、だれもみてなかったら、どろぼうするの?」叱られるから、警察に捕まるから、人のものを盗んではいけないのか、というとそうではない気がする。子供ながらにそうわかっていた。
お祖父さんに悲しい思いをさせてしまうから、といえばその通りだが、では悪人で悲しい思いをしても全く関係のないような人からならいいのか、というとそうでもない。一体、なぜいけないのか。何のために法律はあるのか。そう考え出すと、わからなくなってくる。自分に子供ができて同じようなことをしたときに、なぜそれがいけないのか、と聞かれても答えられない気がしてならない。
しかし、この本には答えが書いてあるわけではなく、それを自分で考えていくものだと書いてある。それでいいのだと思う。答えが書いてあったら、がっかりしてしまうだろう。それよりも、周りにいる人たちとこの葛藤やモヤモヤを話し合って、そしてこれからももっとたくさんの本を読んで、このことについて考えていきたいと思わせるような本だった。
(20代女性)
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