読書感想文「家族ゲーム(本間洋平)」

本間洋平著「家族ゲーム」を読んだ。この小説は映画化、ドラマ化もされているが、私がこの話を最初に知ったのは1983年に放送された長淵剛主演のドラマである。型破りな家庭教師が、どうしようもない中学生を遠慮なく殴って取っ組み合いをし、体当たりで勉強を教える、というものだった。
 
最終話の意外な展開が印象的で、いまさらながら原作を読んでみたくなり探し当てたのだが、ドラマを見ていたのは小学生の頃だったため、自らも親となった今読むと原作はさらに深く考えさせられる内容だった。まだインターネットも携帯もない時代が背景なので、人間と人間の関係が直接的で濃いように思う。
 
原作の中の家庭教師・吉本は、ドラマのような破天荒で無敵な人間ではなく、自分自身も社会に出るのをためらい一社会人として成熟しきれていないような、より人間味のある人間として描かれていた。そして皮肉なことに、そんな他人である吉本が、血のつながった父親や母親よりも兄弟のことをちゃんと真正面から理解しているのだ。
 
今の時代であれば問題視されそうな体罰も、むしろ人間くさくあたたかみさえ感じさせる。かといって、今よりもその頃のほうがよかったのかといえばそうも言えないのが、中学生の茂之の行動を読んでいると、今の時代ならばおそらく確実に発達障害として認められ、もう少しまわりから理解され、本人のペースに合わせた教育を受けることができたのではないかと思われる点である。
 
根本的なところへは誰も目を向けず、学校のテストの成績さえ上がれば良しとする環境は、こういった気質の少年にはさぞ苛酷であったことと想像する。さらに切なくなるのは、粗暴な労働者気質の父親も、元文学少女で息子たちを育てるのに必死な母親も、母親の期待にこたえただただ予定をこなしてきた長男も、そして特殊な気質をもった次男も、誰も間違っているわけでも悪人でもないのに、家族の歯車が完全に狂ってしまっているところだ。
 
それはけして特別な家族ではなく、どこにでもありそうな家族像に感じられた。最近では、2013年に櫻井翔主演で再ドラマ化されているが、こちらは原作とはかなり違ったものになってしまっているように思う。時代背景が違うのは仕方がないとしても、家族が新しく広い一軒家に住んでいるのは、原作の中に終始漂う人間くささのつまった空気とは正反対になっているような気がした。
 
(40代女性)
 
 
 

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