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読書感想文「火車(宮部みゆき)」

読書感想文「火車(宮部みゆき)」
読書感想文「火車(宮部みゆき)」

「火車」の読書感想文①

お金というものは、これほどまでに人の人生を狂わせてしまうものなのか、と、心にずっしりきた本だ。婚約者との結婚を前に、1人の女が姿を消した。婚約者だった若者が、彼女の行方を探し出し、事情を聞いて欲しいと親戚筋の主人公を訪ねてきたところから、物語は始まる。

すぐ終わる痴話喧嘩の範囲かと思いきや、事態は思わぬ大事件に発展していくのだ。まず、若者の婚約者だった女は、別人になりすましている赤の他人だということが分かる。そして、名前を乗っ取られていた女性本人は、ある日を境に行方不明だという。

一体「彼女」は誰だったのか?主人公は休職中の刑事なのだが、事件の予感を感じ、身分を伏せて動ける範囲で本格的な調査に乗り出すのだ。乗っ取られた女と、乗っ取った女。2人の接点を探すうちに、カードローンという共通点が見出されてくる。

家族が家計のためにはまり込んだローン地獄から、とうとう抜け出せずに闇社会の深みに飲み込まれていく様子は、読んでいて恐怖しかなかった。この物語が書かれた当時は、過払い金払い戻しの制度もまだなかった時代のことなので、取り立ては強烈だ。

父親の働き先はもちろん、自宅にもこわい男の人たちが押しかけてくる。とうとう一家は離散、母親はおそらく風俗に売られ、父親は日雇い労働へ売られていった。娘を追っ手から何とか守り切ろうと両親は必死に知恵をしぼるが、とうとう娘も捕まり、地獄の生活をさせられるのだ。

全国どこへ逃げても追っ手が迫り、お金を搾り取られていく様子は、数年前大きなニュースとなって全国に衝撃が走った、角田美代子の事件を思い出してしまった。犯人の境遇には、確かに気の毒としか言えない。度重なる不運と過酷な人生。

やっと抜け出した先にもまだ追っ手がかかる絶望と恐怖から、ついに女は自らの名前も過去も捨て、別人の人生を乗っ取ろうと考えるようになる。とうとう鬼になってしまったのだ。だが、若い身空の女一人で、ここまで過酷な人生を生き抜いてやる、何としても逃げ切ってやるという執念には、同じ女として凄いの一言だ。

だが、どうかこれ以上はやめて欲しいと祈るような気持ちで読んでいた。主人公たちがついに彼女の実物を目にするのは物語の最終章だ。そこで彼女の肩に手がかかる瞬間、これで彼女の恐怖は終わるのだ、鬼と化した罪は重く、償わねばならないが、追われる恐怖は終わるのだ、と安堵せずにいられない。

乗っ取られた方の女性についても詳しくその人生は語られている。様々な、ささいなきっかけから落ちていくカードローン地獄。気軽に身の丈以上の借金ができるクレジットカードが産んだ怪物は、現在に至っても人々を飲み込み続けている。

我が子にも、身の丈に合った金銭感覚を幼い頃から身につけさせることは大事だし、親としても安易な借金はしないようにしよう、と心から思った。

(30代女性)

「火車」の読書感想文②

読み終わったあと、おぞましい感じがする小説だ。犯罪者の女性の不幸の連鎖が、生々しく、胸が痛くなる内容だ。単なる小説でなくて、借金の苦悩の果の犯罪が描かれていて、実際に我が身にも起こることかもしれないと、それも怖くなるストーリーだ。

滑り出しは、主人公の親子の描写が多くつづいたので、ほんわかした気分に包まれた。この親子と近所の人たちとの交流が、恐ろしい犯罪の間に、なんともいえず、惹きつけられるのである。この主人公があることをキッカケに、調査を開始するのだが、その過程で出会う人たちの様子も、「温かさ」「人間って、信じられるな」という風だ。

そもそものキッカケをつくった男性の態度には、ちょっとムッとした。キッカケをつくったのに、「自己中」丸出しだ。でも、「同情すべき点もあるなあ」と彼に同情の感情も起こった。最終的には、彼は、キッカケをつくったあと、主人公の「親切」を信じられず途中で「投げ出す」が、大人の態度としては、いかがなものかと腹が立った。

本の中の皆と同化した。犯罪者の女性の実像がだんだんと明らかになっていく過程がスリリングだ。彼女の生い立ちを主人公が推理し、迫っていく。彼女を憎む気持ちと、同情する気持ちが同時に沸き起こるのだ。ストーリーのテーマである「借金」この金融に関する「情報」や「知識」にも感心した。

確かに、「無知」が犯罪の連鎖を生んだ。自分の無知も、分かって、読んでよかったとも思ったのである。スリリングな感じが絶好調に向かっていく感じは、ワクワクもし、ヒヤヒヤもし、「目」が離せなくなった。いくつかの「ピース」が一つの絵柄になっていく感じが、何とも言えず、快感だ。

ラストで、「犯罪者」と初めて接触するシーンは圧巻だった。しばらく、ぼーとした。あとをひいた。主人公は、体にハンディがあってスタートしたが、この「犯罪者」の影を一生懸命に追う姿は感動だ。執念にイヤミがなく、爽やかな感じだ。読みながら応援した。

(50代男性)

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