「だれもが知ってる小さな国」の読書感想文
佐藤さとるの「コロボックルシリーズ」の第1巻である『だれも知らない小さな国』のオマージュであり、それの新世代版であり、佐藤さとる公認のシリーズ続編といえる作品だ。文体もよく似ている上、挿絵も同じ村上勉なこともあり、「コロボックルシリーズ」のファンだった私は、うっかり佐藤さとる本人が続編を出したのかと誤解してしまいそうだった。
読み始めても違和感はないに等しく、心地よく作品世界に浸ることができた。でもやはり、間違いなく有川浩の作品だと感じてしまったのは、コロボックルに危機が訪れた時のことだ。『だれも知らない小さな国』でもやはり危機が訪れるので、それを踏まえているわけだが、危機をもたらす「悪」の描き方は、有川浩特有のものといえる。
「図書館戦争シリーズ」にも見られるとおり、有川浩は「悪」を共感しがたい存在として、かつねちっこく描く。『だれもが知ってる小さな国』でも同じで、読んでいてかなり辟易した。さすがに児童文学であるため、「悪」は徹底した悪としては描かれず、「本当に悪い人ではない」という扱いなのだが、それでも嫌な気分が読了後まで残った。
有川浩は『だれもが知ってる小さな国』の前にもう1冊、『コロボックル絵物語』も書いているそうだが、そちらは読まないつもりだ。やはりコロボックルの世界は佐藤さとるのものであり、いくら佐藤さとる本人が有川浩が引き継ぐことを望んだとしても、少々無理だったのかもしれない。「悪」の登場までは、本当に違和感なく楽しめただけに、惜しく思う。
面白かったのは、新世代版なだけあり、コロボックルも、それと出会う子どもたちも、しっかり現代っ子であることだ。髪をセットしたコロボックルが登場するとは思わなかった。コロボックルの世界にも、ちゃんと時代の変化が訪れているらしい。また、蜂蜜をとるために蜂を飼う「蜂屋」の生活やその仕事ぶりが克明に描かれている点も面白かった。
漠然と使っている蜂蜜は、このような作業の末に私たちの食卓に届いているのだと思い、これからはもっと蜂蜜をきちんと味わい、大切に使おうと思うことができた。
(40代女性)
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