読書感想文「旅猫リポート(有川浩)」

文庫本を購入して合間を見て読み、1ヶ月くらいで読み終わった。なんだか心あったまるような動物ものか家族ものが読みたくなったので、タイトルに猫という動物の名がはいっていて、どうやら猫が主人公らしいこの本を選んだ。実際に読んでみると、最初から平和でゆっくりとした時間と空気感を感じた。

 

少し偏屈で、いわゆる「ツンデレ」の猫ナナもなんだかんだ可愛い。そして私が大好きになってしまったのは瀕死のナナを救って飼い主になったナナのご主人サトル。物語はナナとサトルの出会いから訳あってナナを手放すことになった悟サトルの、愛車銀のワゴンでの日本縦断の旅を描く。そのなかでサトルは自分の古い友人3組の元に一件ずつ訪問していく。

 

その時に出会った頃のサトルと友人たちのエピソードがリポートとして1つ1つあげられている。最初の友人、コースケとののエピソードを読んだ時点で、筆者の思惑通りか、主役のサトルの出来た人間性に惚れた。コースケがうんぬんかんぬんいったりしたりしても、サトルは気にせず爽やかに物事を進めていく。

 

サトルの両親に不慮の事故があって親戚に預けられることになったことでサトルは住む場所を転々とし、そこで友達が出来る訳だが、ふつうならそんなありえない事故が自分の家庭に起こったら少しはひねくれたりグレたりしたくなるものだと思う。だけれどもサトルは真っ直ぐに優しさと慈しみの心を忘れず、愛されてきた子供時代のまま、大人になったようなキャラクターなのだ。

 

私はサトルが物語に登場したり新たな面を見せてくれるたびに嬉しくなった。そしてサトルの愛されてきた理由や、ナナの引き取り手を探している本当の意味、また、彼と両親のエピソードに対する新たな事実、後半は驚きの連続だった。そして少し寂しいような、悲しいような、そんな気持ちが、文章に描かれる花や空や自然の描写の綺麗さと絡み合い、物語の中の登場人物や気持ちに感情移入してしまっていた。

 

その旅をリポートしているナナの、サトルを想う気持ちには涙させられた。読み始めた時私の心に燈った暖かい火は最後まで消えることなく、読み終えた後も暖かさが残った。人や人以外の動物の心の綺麗さを感じられる作品だった。読んでよかった、ずっと自分のもとに置いておきたい物語だ。

 

(20代女性)


 

 

 

 

私は『旅猫リポート』を読んで、ペットを海よりも深く山よりも高く愛する人の気持ちをようやく理解できたと思った。正直に言うと私はこれまでペットのために自分の時間を犠牲にしたり、かなりのお金をかけたり、不便なことがあってもペットのことを優先する人のことが不思議でならなかった。

 

私だって動物はそれなりに好きであり、かわいい生き物が近寄ってくれば頭をなでたりしてきた。しかし自分の生活や財産を犠牲にしてまでペットに夢中になるという心理はどうしても理解できなかったのだ。テレビでペットのために高額の家やお墓を買っている人を見たときは、私はひどくあきれかえった。

 

また、私の知人が捨てられている動物を拾ってきては知人の収入の多くを動物に使ってあげて寿命がくるまで熱心に面倒をみる状態をどう理解していいのかわからなかった。『旅猫リポート』を読み始めたばかりのころも同じだった。車にひかれた野良猫を悟が助けて親身になってかわいがる様子に「ああ、私にこの本は合わないかもしれない。

 

動物を溺愛する人の話なら感情移入できないだろうな」と思った。しかし悟と飼い猫になったナナが旅を続けているうちに、だんだんと悟の生い立ちがわかってくる。悟という人間の悲しみや苦しみを追体験していくうちに、ナナを悟が迎え入れるのは必然だと感じることができた。

 

「動物への優しさ」なんていう言葉など生ぬるく陳腐に感じてしまうほどに、悟とナナのあいだには愛が生まれていたのだ。それを私はちっとも不思議には思わなかった。悟がナナを飼ってあげているというのではなく、悟もまたナナからパワーをもらって生かしてもらっているのだ。

 

今まで私が「ペットをなぜそれほどまでに愛せるのだ」と首をかしげてきた人たちにも、それぞれに生きてきた人生があるのだという思いにようやく私は至った。私は悟やその友人たちのようにペットを愛することで救われたり、生きる希望を見出せるような人生ではなかった。それがちょっと残念だとさえ、悟とナナの旅を読み進めるうちに感じたのだった。

 

(40代女性)

 

 

 

 

旅猫リポート (講談社文庫)
有川 浩
講談社 (2017-02-15)
売り上げランキング: 1,444

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

 

 

有川浩作品の読書感想文はこちら

コメントを残す

シェアする