読書感想文「阪急電車(有川浩)」

普段使用している電車という場所は、公の場であるにも関わらず何故か不思議なことにプライベートな空間。だから電車に乗るときは、私はいつも携帯電話か読書をしている。もちろん、乗り合わせている他者には見向きもしていない。

 

だけどそんな風にして忘れてしまっている、乗り合わせている人、一人一人にはそれぞれ人生があったんだということに改めて気付かされた。読み始めは、ああ、こんな人いるいる!なんて思い、少しだけ親近感を湧かせながら読んでいたが、しだいに、こんな小さな車両の中の出会いや縁を大切にするということで、こんなにも人生が変わるんだと教えられたような気分になった。

 

人は他者のたった一言の言葉や少しの行動による影響で人生が180度変わる。まさに電車こそ、そんな風に他者の影響を沢山受けることができる場所だったじゃないかと気付かされた。そして、私はそんな大切な出会いの場をこれまで無駄にしてきてしまったんだなと少し反省した。

 

この本を読んでから、電車の中で人を見ながらその人の生活を想像することが多くなった。ああ、この人はこの後家族でご飯を食べるんだなとか、この人は今日何かブルーなことがあったんだなとか。それから、その食事の中での会話やブルーな出来事の原因まで想像するともっと面白い。そうしているうちに不思議と、あ、この前も乗ってた人だ!なんて新しい発見もしたりする。

 

これはこの本を読まなければ気付かなかったことだ。なんとなく心が温かくなり、自分という人間が大きくなったような気がした。また、この本を読んでからは途中下車もするようになった。そして、その町一つ一つの温かさ、あるいは冷たさや忙しさを感じるようになった。目的もなく途中下車なんて今までしたことはなかったけど、ただ駅の看板を見ただけでその駅の人の人柄や生活も見える気がする。

 

そしてまた、人ってこんなにも温かいんだなと感じることができる。この阪急電車は、まさに人の温かさを沢山教えてくれる作品だ。

 

(20代女性)


 

 

 

車内で乗り合わせただけの客の物語が繰り広げられる、という一人一人が主人公であり、主人公でないという所に私は感動を感じた。というもの、大体どの作品は必ず誰か1人が主人公で脇役である為、こういう作品に出逢えた事に私は感激を覚えたのである。

 

リアルに行動が再現されており、脳内で「そうか、このキャラはこう動いてるのか」と考え次のページを捲らずには居られない状態で読めるのだ。時にして、小説の中で私はあるセリフが頭の中に残っている。『宝塚方面行き─西宮北口駅』にて、電車に乗っていたおじいさんが主人公のミサに掛けた言葉だ。

 

「混んでる電車でみんな座りたいのに、鞄座らせてまで連れの分の席取って、どんな教育されとんじゃ!」という言葉にグッと改めて思わせるものがあった。これは現実にもあると思うのだ。友達を待つ為に隣の席にわざわざ鞄を置いて、「ここに人が座るから誰も座るな」と。

 

他の人からしたら、邪魔でしかない。だから、私も友達を待って座る時はちゃんとマナーを守って座ろうと思っている。というのも、電車に乗る機会が少ないから乗る機会があったら、の話だが。

 

この小説を何回か読んでいるうちに分かる事がある。何度か同じキャラが出る事があるのだ。私が心に残ったという、あのミサも3回、いや2回か出ているだろうか。そのそれぞれのキャラクターの事が少しずつ分かるという点で非常に賛称したい。つまり何回も読める本なのだ、これは。読み返せば読み返す程理解が深くなる。

 

あらすじに書いてある、”人数分のドラマを乗せた電車はどこまでは続かない線路を走っていく。”この部分に注目して頂きたい。いつまでもとは行かないけど、ほんの片道十五分で起きる物語。私はそれが好きなのだ。現実ではびっくりするほど何も起きないだろう、でも、見て損はなかった。

 

勇気のある行動、発言。それを見ると「ああ自分もそうなりたい」と思えるのだ。どこまでも不思議な物語だと思う。

 

(10代女性)


 

 

 

電車に揺られながら、文庫本を開いている時間が好きだ。ちょっとした旅行に行くときは、わざと鈍行に乗ってゆっくりのんびりと、ガタガタと揺られながら文庫本を読んでいる。ふと顔を見上げると見たことのない風景が広がって、本のなかの世界とどこかへ行く今の自分の状況を行き来することを楽しむ。

 

有川浩著書の「阪急電車」はそんなときに読むのにはうってつけの本だ。なぜならこの本は駅ごとの素敵なストーリーが盛りだくさんの、物語を背負った小説だから。「宝塚駅」ではなにやら新たな恋が芽生えそうな男女があり、「宝塚南口駅」ではものすごく目立つ純白のドレスを着た女性が乗り込み、「逆瀬川駅」で乗ったお婆さんが純白のドレスの女性になんとも素敵なアドバイスを与える。

 

電車が駅に停まるたびにドラマが生まれていき、読んでいるこちらまでにやけてしまいそうだ。電車に乗り合わせることは本当に偶然で、普段は言葉も交わすことはないのだけれど、相手がギスギスしてどんっとぶつかってきたりするとその日が一日不快になったりしてしまう。

 

逆に、たまたま目が合った赤ちゃんが笑いかけてくれるととても癒されたりする。人と人はすれ違っただけでも影響され合っているのだなと思う。「一人で、あるいは友達や恋人同士、家族連れ、仕事関係、ありとあらゆる身分、ありとあらゆる組み合わせの人々がコンコースを早足に横切っていく。

 

その一人一人がどんな思いを持っているか、それは歩いていく本人たちしか知らない。」みんなそれぞれちょっとずつ不満を抱えていたり、もやもやしたものを抱えたりしながら電車に揺られていく。

 

電車に乗っている人たちがほんの少しの間だけ触れ合って、その人の抱えているものがちょっぴり楽になるようなストーリーたちがわたしを安心させてくれた。全編を通してなにか急展開があるわけでもないけれど、本の中の人々が阪急電車に乗ってちょっとずつ幸せになっていくごとに、わたしも不思議と幸せのおすそ分けをもらっていた。

 

(20代女性)


 

 

 

この作品はひとつの作品ではあるものの様々な人にスポットを当てている。その全てが女性ではあるものの、多くの感覚を得られる。婚約者を寝取られた女性、ダメ彼氏に縛られる大学生、孫と過ごす老婦人、大学デビューに失敗した大学生、大学受験を控えた高校生、主婦友の付き合いに振り回される主婦、いじめられている小学生。

 

実際に自分が体験したことに近しい境遇もあれば、まだまだ体験したことのない境遇の人物もいた。中でも心に響いたのは孫と過ごす老婦人だ。私自身、まだ老婦人と呼ばれるには遠い年齢だが、あれを年の功と言うのだろうか。全ての言葉がしっくりと心の奥に入り込み、本を読み終わってからもずっと、心の奥に居座っている感覚だ。

 

孫が泣き止まずにいると、泣いた原因が孫によるものではないので、「泣きなさい」と言う。でも、泣いてもいいが「自分の意思で涙を止められる人になりなさい」と言う。子供には少し難しい言葉かもしれないが、年や性別に関係なく、みんながみんなこうありたいと思うのではないか。

 

このセリフを読んでから自分の意思で涙を止められるように頑張っては見るもののなかなかうまくいかない。小さいときからこんなことを言ってくれる祖母がいるなんてとても幸せだし、どんな大人になるのか。この小さい孫が大きくなった話も読んでみたい。

 

そして1番感情移入をしてしまったのが婚約者を寝取られてしまった女性。自分とは無縁の出来事だったが、なぜか共感できる部分が多かった。「お前は強いから泣かない」と勝手に決めつけられ、言ってしまえば被害者とも言える立場にありながら、悪者のように扱われる場面では、怒りがこみあげてきた。

 

悪いことをしても弱い人、いや、弱そうな人には優しいこの世の中で、強そうに見える彼女は本当に生き難いだろう。そんな深い心の傷を埋めるのではなく消すようにリセットして前向きに生きていく様は本当に清々しい。私も何か嫌なことがあったら、その傷を埋めるのではなく消してしまおうと思った。

 

(30代女性)

 

 

 

 

 

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1 件のコメント

  1. android より:

    ㄟ( ▔∀▔ )ㄏイミフ

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